研究実績の概要 |
上皮細胞の機械刺激への応答性(メカノセンシング)の分子メカニズムを解明するためには、そこで働く様々な分子の量的動態を知ることが一つの有力な方法となる。しかし、内在性タンパク質の「量」を知る手段は現在のところ確立されていない。本研究ではゲノム編集技術を用いて内在性のタンパク質に蛍光タンパク質タグを付加し、その蛍光強度を比較することで種々のタンパク質の相対量を決定することを第一段階の目標としている。さらに次の段階として、その技術を用いて量的側面から上皮メカノセンシングの新たな動作原理を解明することを目指している。マウス乳腺上皮細胞株EpH4を用い、これまでに上皮細胞間接着でメカノセンシングに関わる7遺伝子(CDH1, CTNNA1, VCL, TJP1, TJP2, ACTN1, ACTN4)に対して、そのタンパク質C末端に緑色蛍光タンパク質GFPをホモ接合でノックインした7種類の細胞株を樹立した。また、3遺伝子(CDH1, CTNNA1, TJP2)については赤色蛍光タンパク質RFPのホモ接合ノックイン細胞株も作製することができた。現在GFPタグのノックインに成功した遺伝子7種について、その蛍光強度の比較から細胞間接着におけるタンパク質の存在量比を決定することができている。2020年度はこれらのGFPまたはRFPノックイン細胞株を利用して、細胞間接着に応力変化が生じる状況でこれらのタンパク質にどのような量的変化が見られるかについて解析を行った。その結果、vinculin(VCL遺伝子)とZO-1(TJP1遺伝子)は細胞間接着にかかる応力を人為的に変えた場合、その存在量や接着複合体の内部での微小な分布パターンが変化することを見出した。この結果の意味するところについて現在解析を進めている。
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