正常および3種の代謝疾患モデルマウスの肝ミトコンドリア画分に含まれる約37000種のRNA(rRNAを除く)をGEOデータベースに登録した。それぞれの登録番号は正常C57BL/6: GSM4815735、C57BL/6-ob-/ob-: GSM4815736、C57BL/6-NASH: GSM4815737、C57BL/6-db-/db-: GSM4815738である。同定されたRNAの90% 以上がmRNA(断片を含む)で、lncRNA、miRNA、snoRNAなどがそれぞれ1-2% であった。ミトコンドリア画分に核や細胞質のRNAが混入している可能性が考えられたため、ミトコンドリア内にlncRNAが存在することをFish法を用いて観察し、実際にmalat1などが呼吸鎖複合体タンパク質と共在することを示唆する予備結果を得た。RNAの細胞内分布をさらに詳しく解析しlncRNAがミトコンドリア膜間腔またはマトリックスに存在することを確実に証明したい。一方、ミトコンドリア精製標品より調製した呼吸鎖IおよびII複合体、β酸化VLCAD複合体を得て、これらに含まれるRNAを解析した。まず、正常マウス由来のミトコンドリア複合体をRNase処理すると複合体の量および酵素活性が減少することを確認した。次に、複合体に含まれるRNA分子種をクローニング法またはRNA-seq法にて分離・同定し、4種のマウス間で含有量に差のあるlncRNA を選定した。各lncRNAについて、miRNAを用いて細胞機能への影響を解析した結果、ある種のmiRNAに細胞増殖を阻害する効果が認められたものの、複合体の形成や酵素活性に影響を与えるものは無かった。さらに解析を続けミトコンドリア機能的タンパク質複合体に結合するRNA種を同定しその役割を明らかにしたい。
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