研究課題
海綿体は、雄の機能単位として勃起の為の中心的な組織である。本研究では、マウス海綿体の間葉が如何に発生期に特徴化されるか、雄性器官としての海綿体の実験操作の為にexplant(組織片)実験系として培養を行い、海綿体発生や機能に関する制御因子群の解明、更に男性ホルモンシグナルとの関連を解明する。これまで雄マウス海綿体が胎生末期に間葉細胞の特徴化を示すことが明らかとなった。スクリーニングによって細胞増殖因子シグナルであるBMP(骨形成因子)信号系が同間葉細胞の出現及び凝集に重要であることが示唆されつつある。BMPシグナルはアンタゴニストを含めその制御が重要であり、アンタゴニスト遺伝子(noggin遺伝子)の発現が検出されつつある。更に、数種類の転写因子群が特徴的に発現することも同定されつつある。海綿体の勃起過程についてはこれまで大動物の in vivo model を中心に電気生理学的実験しか遂行されていなかった。発生期での知見に加えて本プロジェクトによりexplant(組織片)として取り出し、in vitro において海綿体機能の一部を再現することが初めて可能となりつつある。抽出した海綿体組織についていくつかの収縮及び弛緩の誘導因子(NE(Norepinephrine)やNOドナーなど)を加え、in vitro の”勃起”における収縮/弛緩などの機能を解析するシステムの確立を目指すことが可能となりつつある。論文業績としてはDifferentiation、International Journal Molecular Sciences(IJMS)等の国際誌に昨年度に受理された。
2: おおむね順調に進展している
海綿体組織を用いた実験医学的な研究は、ラット等を用いた電気生理学的な実験が主体であった。発生期での知見に加えてin vitroにおいてマウス海綿体組織をexplantとして摘出して培養し、各種の因子群(収縮/弛緩の制御因子;NE(Norepinephrine),NOドナーなど)を加え、海綿体組織のresponseの再現に成功しつつある。さらに初年度に於いて同定されつつある海綿体組織の形成、未分化間葉細胞の発生に重要なBMP(骨形成因子)やその制御因子群と今回樹立したexplant 系における平滑筋細胞を含む各種細胞の海綿体組織に対する機能(損傷修復のプロセスも含む)の解析が可能となりつつあり、進捗状況としておおむね順調に推移している。
最終年度においては、マウス海綿体発生期において得られた知見を応用し、海綿体の発生に必要な間葉細胞群に関する知見と海綿体組織の修復反応との関連についても実験を行う。海綿体組織は加齢、糖尿病などの血管性の病変、ストレスなど多種の障害を受ける。しかしながらそのメカニズムの解明や修復に向けたアプローチは希少である。よって以下を中心に研究を行う。間葉細胞に作用する増殖因子群や、それらの因子への応答性や、損傷修復時の間葉細胞の関連について解析する。それらについては発生期及び海綿体にストレス(虚血及び充血時によるストレスを含む)付加時の関連するマーカー遺伝子発現について、発生期並びに損傷修復時における制御様式について調べる。損傷修復の系としては老化に伴うレスポンスについても解明し、老齢マウスの海綿体組織と通常マウスの海綿体組織の組織的違いについて解明し、老齢マウスから採取したin vitro explant 及び通常マウス群を比較して、収縮及び弛緩の誘導因子に対する応答やストレス付加時の因子群の発現変化や各種信号系の発現についても解析する。今回樹立しつつあるマウス海綿体由来のin vitro explant用いた系に於いて、収縮や弛緩などのresponseが再現されつつある。よってこれまでに同定されたBMPやアンタゴニストを含む細胞増殖因子群や制御因子群についてexplantの培養系を駆使して海綿体損傷修復での知見を得る。
年度末に出張のキャンセルなどがあり、残額が生じた。次年度に実験の試薬購入に使用する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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