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2020 年度 実施状況報告書

アルギニンメチル化による長鎖非コードRNA結合の抑制と生理的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06939
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

黒川 理樹  埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70170107)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードアルギニンメチル化 / RNA結合タンパク質 / TLS / FUS / lncRNA / pncRNA-D
研究実績の概要

2020年度は、TLS・FUSに結合する新規lncRNAの同定を行った。現在までに、TLSは、相分離研究のモデル系として生化学・分子生物学・構造生物学研究に用いられ、多くのNature, Cell, Science論文が発表されてきた。TLSの構造と機能には、RNA結合が重要な役割を果たしている。また、TLSのRNA結合が相分離の制御にも関与することが示唆されている。したがって、TLSに結合する新規RNAの同定は、相分離研究を推進するものである。しかしながら、TLSに結合するRNAは、私どものpncRNA-D以外、あまり報告されていない。そこで本研究では、pncRNA-Dと同じカテゴリーのlncRNAで、TLSに結合するRNAを探索した。
まず、大腸菌発現GST-TLSをライゼートからGSTアガロースにより分離・精製し、MNaseヌクレアーゼによりGST-TLSに結合した大腸菌の内因性のRNAを除去した。このGST-TLSとHeLa細胞の総RNAをインキュベーションした。このHeLa細胞RNAを結合したGST-TLSをRNeasy Plus Mini kit(Qiagen)で処理して、結合したRNAを分離した。これをヒトlncRNAマイクロアレイ(SurePrint G3 , Agilent)で解析し、結合したRNAシグナルを検出した。
この結果、対照のHeLa細胞RNAに比べて、GST-TLS結合画分で10倍以上シグナルが増加したlncRNAは51種類が見出された。20倍以上のシグナル増加が見られたlncRNAも11種類が検出された。現在、アノテーションのある上位11種類のlncRNAについて結合実験を行っている。この過程で、すでに複数のTLS結合性の新規lncRNAが同定された。これはTLS研究に有為な貢献なす成果である。この成果を論文発表したいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験計画で予定された項目は、9割以上完遂した。したがって、おおむね順調に進展していると認められた。

今後の研究の推進方策

2020年度は、TLSに結合する新規lncRNAを同定した。このlncRNAから、メチル化によりTLS結合が抑制されるlncRNAを同定する。大腸菌発現のGST-TLSをアルギニンメチル化酵素PRMT1でメチル化し、非メチル化GST-TLSを陰性対照として、GST-TLSメチル化の新規に同定されたlncRNAのTLS結合に対する効果を調べる。pncRNA-Dと同様にメチル化依存的にTLS結合が抑制されるlncRNAの同定は、本研究の大きな成果となる。
そして、当該lncRNAがヒストンアセチル化酵素活性(HAT)を抑制するか検討する。すなわち、各lncRNAをHAT活性測定実験系に添加して阻害作用を調べる。
これも大きな成果で、TLSのHATを抑制するlncRNA存在の普遍性を示すことになる。TLSのHAT阻害効果には特異的なRNA結合が必要なので、メチル化により新規lncRNA結合が抑制させると、HAT阻害効果も抑制させる可能性が高い。これを検証していく。そして、同定されたlncRNA群に関して、ノックダウンおよび強制発現実験を行い、TLSのHAT阻害を抑制するか検証する。この成果は、アルギニンメチル化がTLSを介して、lncRNA機能をグローバルに制御する、新しい仕組みを提示する。これは、アルギニンメチル化によるTLSのHAT阻害制御の生物学的意義を検証する成果となる。

次年度使用額が生じた理由

予定していた実験が過怠なく実行された。さらに、経費節減に努めたことが奏功して、次年度の使用額が生じてきた。これにより、本課題の一年間の延長を申請して認められた。この予算は、上述の【今後の研究の推進方策】の実験等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Non-coding RNA suppresses FUS aggregation caused by mechanistic shear stress on pipetting in a sequence-dependent manner2021

    • 著者名/発表者名
      Nesreen Hamad , Ryoma Yoneda , Masatomo So , Riki Kurokawa , Takashi Nagata , Masato Katahira
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11(1) ページ: 9523

    • DOI

      10.1038/s41598-021-89075-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Potential Inhibitor Against Phase Separation, 1,6-hexanediol Specifically Binds to Beta Actin in Nuclear Extract of Human Cell Line2020

    • 著者名/発表者名
      Naomi Ueda, Yuki Hirose, Ryoma Yoneda, Toshikazu Bando, Riki Kurokawa
    • 雑誌名

      Biomedical Sciences

      巻: 6 ページ: 88-97

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 相分離・凝集体形成の抑制因子1,6-hexanediolの作用機構と生理的意義の解明2020

    • 著者名/発表者名
      黒川 理樹
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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