研究課題/領域番号 |
18K06941
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古室 暁義 近畿大学, 医学部, 助教 (50512274)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Histone demethylase / 乳がん / エピジェネティクス / 発現制御 |
研究実績の概要 |
Histone demethylaseのUtxはヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)のメチル基を取り除き転写を制御する。乳がんとの関与については、上皮間葉転換(Epithelial Mesenchymal Transition: EMT)を誘導し転移を促進するという報告と抑制的に働くとの報告があり、依然としてUtxと乳がんの関連性は不明な部分が多い。 同じくHistone demethylaseであるKDM4BはヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル基を取り除き転写を制御する。これまでに当研究室で独自にKDM4Bの乳腺特異的ノックアウトマウスを作成し、このマウスは乳腺発育異常をきたすことを明らかにしている。 本研究では、Histone demethylaseがMMTV-PyMT乳がん発症マウスに及ぼす影響を、2種類のHistone demethylase (UtxまたはKDM4B)のコンディショナルノックアウトマウスと掛け合わせることで、乳がんの発症・増殖・転移に与える影響を観察した。その結果、Utx欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスでは腫瘍増殖や肺転移が促進していることが認められた。非常に興味深いことに、乳がんオルガノイドを形成した後、I型コラーゲン内に包埋すると浸潤形態を強く伴いながら増殖することを見出した。KDM4B欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスでは原発腫瘍の形成や腫瘍増殖が遅れていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画に沿って順調に進行している。Utx欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスでは腫瘍増殖や肺転移が促進していることが明らかとなった。他方で、KDM4B欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスでは原発腫瘍の形成や腫瘍増殖が遅れていることが認められた。2種類のHistone demethylaseがMMTV-PyMT乳がん発症マウスにそれぞれ異なった影響を示す結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Utx欠損した乳がんオルガノイドを形成した後、I型コラーゲン内に包埋すると浸潤形態を強く伴いながら増殖していた。この状態の細胞を回収後、どのような遺伝子に影響を与えているかを明らかにするためにRNA-SeqやChip-Seqを行うことを予定している。また、現在、乳がん幹細胞への影響を細胞内ROSレベルと幹細胞マーカーで定量・単離しながら調べることを計画している。 KDM4B欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスから乳がん細胞を回収してRNA-Seqを行い、腫瘍形成に対して抑制的に働く因子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Utx欠損とMMTV-PyMTの複合変異を持つ乳がん発症マウスから乳がん細胞を回収し、次世代シーケンサーで悪性化に関わる分子の同定を試みる予定であったが、乳がんオルガノイドを作成し、I型コラーゲン内に包埋することで浸潤形態を伴う興味深い結果を得た。引き続きオルガノイド培養系を使用することと浸潤形態においての次世代シーケンサー用いた発現解析を次年度に行うことにしたため差額が生じ繰り越すことにした。
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