ヒトの形態形成に異常をきたす遺伝病(3MC症候群)においてCL-K1、CL-L1の変異が報告された。通常、コレクチンは糖鎖認識分子レクチンとして生体防御に関与するが、本報告により、ヒトの形態形成に関与するという全く新しい役割を担っていることが明らかにされた。3MC症候群はCL-K1あるいはCL-L1のどちらか一方の変異で生じていることから、CL-K1およびCL-L1の両者が協調的に形態形成に関与していることが推察される。また、CL-K1とCL-L1がヘテロ複合体CL-LKを形成することを報告されたが、ヘテロ複合体CL-LKを形成しうることがヒトの形態形成に必須かどうかは不明である。本研究では、野生型および3MC症候群で見つかった変異型のCL-L1、CL-K1のヘテロ複合体形成の有無およびヘテロ複合体CL-LKの役割を明らかにすることで、3MC症候群の発症原因や発症機序を見出すことを目標としている。 これまでの結果から、3MC症候群の発症に関連する変異を持つコレクチンではCL-LKヘテロ複合体を形成できないことを明らかにした。3MC症候群は補体関連タンパク質であるMASP-3も責任遺伝子として見つかっているため、本年度はCL-LKヘテロ複合体とMASP-3との関連性について検討した。その結果、CL-LKヘテロ複合体とMASP-3が直接的に相互作用することを明らかにした。また、CL-LKヘテロ複合体は他のコレクチンが認識するマンナン糖鎖には結合せず、DNAに結合することを明らかにした。以上の結果からCL-LKヘテロ複合体は他のコレクチンとは異なるリガンドを認識し、そこにMASP-3を集積させることで胎生期における形態形成に関与している可能性が考えられる。
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