今後の研究の推進方策 |
当初予定していた実験の多くはほぼ終えており、次のようにその後に重要性が増したフェロトーシスについても、NOによる抑制機構を中心に研究を行う予定である。2012年にはじめて報告されたフェロトーシス(Dixon et al, Cell, 2012)では、活性酸素によって生じる過酸化脂質が関与する。しかし当初はその重要性についての理解が進んでおらず、発表後数年してから急速に注目を集めるようになった (Stockwell et al, Cell, 29017)。そのため本課題の申請段階では研究対象としていなかったが、細胞死の形態として重要なため、新たな研究対象として取組んでいる。NOによるフェロトーシスの抑制については、ごく最近になって海外のグループから論文発表された(Kapralov et al, Cell, 2020)。そこでは活性化されたマクロファージにおけるフェロトーシスを対象としているが、マクロファージは他の多くの細胞とは異なる特殊な細胞である。本研究課題では肝臓やその他の臓器に由来する細胞を対象とし、システイン欠乏などによって起こるより一般的なフェロトーシスに対するNOの抑制機構について検討する。そのため、得られる知見は、より広い疾患の予防や治療に適用可能と考える。 具体的には、まず各種刺激によってフェロトーシスを誘導した培養細胞にNOドナーを投与し、細胞死抑制のしくみについて細胞生物学ならびに生化学的な観点から検討する。我々はこれまでにフェロトーシスを特異的に認識する抗体の作出にも成功している(論文投稿中)ため、本抗体を用いてNOによるフェロトーシスの抑制についての細胞学的検討を行う。さらに抗原分子を同定することで、フェロトーシスの実行に関わる分子機構の解明を進める
|