研究課題/領域番号 |
18K06951
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
幡野 雅彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20208523)
|
研究分担者 |
坂本 明美 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 准教授 (90359597)
藤村 理紗 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 助教 (30376363)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 腸管神経 / 腸内細菌叢 / 腸管免疫 / 無菌マウス / Neuromedin U / Ncx KOマウス |
研究実績の概要 |
腸管神経による腸管免疫及び腸内細菌叢制御について明らかにするために腸管神経細胞増多を認めるNcx KOマウスを用いて解析した。Ncx KOマウス小腸腸管粘膜固有層において好酸球の割合が野生型と比較して有意に増加していた。また小腸におけるIL5, Neuromedin Uの発現の増加を認めた。IL-5産生細胞について解析したところILC2及び神経細胞において野生型に比較しKOマウスでは産生が増加していた。免疫組織染色においては腸管神経節において Neuromedin U産生神経細胞がKOマウスにおいて増加していた。これらの結果からNcx KOマウスにおいては Neuromedin UーILC2ーIL5ー好酸球増加という経路が示唆された。 次にNeuromedinU産生に至るシグナルについてまず腸内細菌叢との関連を見るために無菌マウスを作成した。Ncx KO無菌マウスにおいてはNeuromedin U発現が野生型と差がなかったことより腸内細菌からのシグナルが腸管神経細胞におけるNeuromedin U発現を制御している可能性が示唆された。さらにNcx KO無菌マウスは4週齢以降死亡する個体が出現、8週齢までにすべての個体が死亡した。死亡した個体はいずれも腸管の拡張と糞便の鬱滞が認められ腸管機能不全が示唆された。これに対し野生型無菌マウスでは死亡個体はなく,またSPF環境下のNcx KOは約20%のマウスが巨大結腸で死亡したが80%は8週齢以降も生存し生殖可能であった。これらの結果より腸内細菌が腸管機能制御することによりprotectiveに作用していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腸管神経細胞増加による腸管免疫系細胞の変化については明らかとなった。無菌マウスを用いて腸管神経・腸内細菌・腸管免疫の相互作用について明らかにしようとしたが無菌Ncx KOマウスの腸管機能不全によると思われる死亡については予期していなかった。そのため研究計画について再考する必要があり遅延の原因となった。
|
今後の研究の推進方策 |
腸管神経系異常における腸内細菌の異常・腸管免疫系の異常についてこれまで現象は明らかとなったがメカニズムについての解析が進んでいない。腸管神経がneuromedin Uを産生するのに必要な腸内細菌からのシグナル、さらには腸内細菌による腸管生理機能制御のメカニズムについて腸内細菌叢のメタゲノム解析や無菌Ncx KOマウスとSPF Ncx KOマウスの腸管における遺伝子発現の網羅的解析から明らかにしていく方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部予期しない結果が出たため研究内容を発展させるためにさらなる解析が必要となった。遺伝子発現解析や腸内細菌叢解析及び論文投稿料として使用する予定である。
|