EGF受容体下流のMAPキナーゼ経路で作用するRibosomal S6 kinase (RSK)は細胞増殖や運動など多彩な機能を発揮する。RSKファミリーの分子はキナーゼという特性から基質探索が広く行われてきたが、主にin vitroの実験系であったため、これまで報告されている分子群が生体内でリン酸化を行う真の基質かどうかは再検証する必要がある。またリン酸化酵素は他の分子と一過的に相互作用するだけで酵素反応を進行させることができるため、RSK結合因子に関する情報は極めて少ない。本研究ではGFPをRSK2のC末にノックインした乳腺上皮細胞MCF10Aを材料とし、GFP抗体に対する免疫沈降によって、RSK2結合タンパク質の同定を試みた。質量分析の結果、エストロゲン受容体が転写を起こす際にコアクチベーターとして働くタンパク質が同定された。これまでRSK2との相互作用が報告されている数少ない分子の中にエストロゲン受容体があり、これら分子がEGFシグナルに応じて転写制御を行っている可能性が考えられる。また同細胞を用いてエストロゲン刺激を行ったところ、RSK2-GFPは確かにエストロゲン刺激によって確かに核に移行した。この結果はEGFシグナルとエストロゲンシグナルのクロストークにより転写制御複合体が形成することを示唆した。
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