研究課題/領域番号 |
18K06962
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中津海 洋一 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (20596837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性炎症 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでにがん細胞におけるmTORC1の活性化がFOXK1の活性化を誘導することで、がん炎症を惹起するという結果を得ていた。がんにおけるFOXK1の活性化は炎症性ケモカインであるCCL2の発現を上昇させ、M2型マクロファージの集積を誘導する。この結果に基づき、同じくmTORC1の異常活性化が観察され、なおかつCCL2の発現上昇とマクロファージの集積が認められる肥満脂肪組織の慢性炎症についても、がんと同様にmTORC1依存的なFOXK1の活性化が寄与するという仮説を立てた。この仮説に基づき脂肪組織のFOXK1を特異的に欠損したマウスを作製した。FOXK1 flox マウスに脂肪細胞とマクロファージの両方で発現するaP2-Creマウスを掛け合わせたマウスを作製したところ、通常食投与時には体重、血糖値ともに有意な差は見られず、高脂肪食投与時においても体重に有意な差は見られなかった。しかしながら高脂肪食投与時における耐糖能については有意な改善が見られた。以上の結果から脂肪組織における脂肪細胞・マクロファージのどちらかのFOXK1の活性化が耐糖能の異常に寄与していると考えられた。体重に差がないものの耐糖能のみに違いが見られるメカニズムは今後明らかにする必要がある。またマクロファージと脂肪細胞のどちらのFOXK1が機能しているかについて明らかにする必要があるため、現在は脂肪細胞特異的にFOXK1が欠損するマウス(Adiponectin-Creマウスとの掛け合わせ)を作製し、現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪組織特異的なマウスの作製とその解析は順調に進んでいる。aP2-CreによるFOXK1欠損マウスにおける耐糖能の改善という表現型も確認でき、仮説の一部は立証された。脂肪細胞とマクロファージのうち、どちらの細胞のFOXK1が表現型に寄与するか、またそのメカニズムの詳細を今後は解析していく必要があるものの、現状ではおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、肥満脂肪細胞のFOXK1の活性化が耐糖能異常に寄与するか否かのについての検証を行う。aP2-Creマウスとは異なり、マクロファージのFOXK1については欠損させず脂肪細胞のみで欠損させるマウス(Adipinectin-Creマウス)を作製し、耐糖能異常の改善が見られるかを観察する。これまで得られたデータではマウスの体重には異常が見られず耐糖能のみに変化が見られた。この詳細なメカニズムについても解析してゆく。
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