申請者はFOXK1はmTORC1の下流で活性化を受けるとともに、がんの慢性炎症に促進的に機能することをこれまでに報告してきた。mTORC1は栄養シグナルによって活性化するため、下流のFOXK1についてもmTORC1と同様に高栄養状態において活性化状態にある。このことからmTORC1の異常活性化がみられる肥満脂肪組織の慢性炎症についても、がんと同様にFOXK1が寄与するという仮説を立て、脂肪組織とマクロファージについてFOXK1を欠損したマウス(FOXK1 floxマウスとaP2-Creマウスとの掛け合わせたマウス)を作製した。その結果、通常食投与時には体重、耐糖能ともに野生型マウスと比べて違いがみられず、長期的な高脂肪食投与時においても体重に違いは見られないものの、耐糖能の変化について有意な改善が見られた。この結果を受けて脂肪組織のみでFOXK1を欠損したマウス(Adiponectin-Creマウスとの掛け合わせ)を作製した。このマウスはaP2-Creマウスと同様に通常食投与条件下では体重や耐糖能に特に違いは見られなかった。しかしながら長期的な高脂肪食投与を試みたところ、aP2-Creマウスとは異なり耐糖能の改善には至らなかった。この結果は高脂肪食負荷時の耐糖能に関与しているのは脂肪組織ではなく、マクロファージのFOXK1である可能性を示唆するものである。2020年度はこの可能性を検証するため、マクロファージ特異的にFOXK1を欠損したマウスを作製し、高脂肪食負荷実験を行い、検証を進めるする。
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