研究課題/領域番号 |
18K06963
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
白石 裕士 大分大学, 医学部, 准教授 (80452837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リボソーム病 / ポリヌクレオチドキナーゼ |
研究実績の概要 |
リボソームは、mRNAからタンパク質を作るのに必要不可欠な、すべての生物が持っている最も基本的な細胞内装置である。近年、さまざまな原因によるリボソームの機能障害が、特定の疾患群と関連することが明らかとなり、それらの疾患群を総じてリボソーム病と呼び注目されている。Nol9はDNAおよびRNAの5'末端をリン酸化しうるポリヌクレオチドキナーゼの一つであり、リボソームRNAの生合成に関わると考えられている。本研究では、Nol9遺伝子改変マウスを用いて、Nol9の生理的役割とリボソーム病の発症機序について解析を行なった。昨年度までに、造血細胞特異的Nol9欠損マウスおよび時期特異的Nol9欠損マウスの解析を行い、赤血球分化異常による貧血様症状を呈することを明らかにしてきた。本年度はさらに表現型の解析を行い、Nol9欠損によって赤血球分化の異常は初期と後期の二層に分けられることが明らかとなった。また、それぞれの段階における細胞をAnnexin V染色によるフローサイトメトリー解析や活性化caspase 3の免疫染色にて解析したところ、アポトーシスによる細胞死を起こしていることが明らかとなった。さらに、ピューロマイシンアナログであるO-propargyl-puromycinをマウスに投与することで、生体内におけるタンパク質翻訳活性を測定したところ、Nol9欠損マウスの血球系細胞において有意に活性の低下を認めた。これらの結果から、生体内においてNol9がリボソームの合成に関与していること、そしてNol9の欠損がリボソーム病様症状を引き起こすことが明らかとなった。今後、さらに詳細な解析を行い、分子メカニズムについて明らかにするとともに、発がんモデルを用いて、リボソーム病でなぜ発がんリスクが上昇するのかについても解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類のNol9遺伝子改変マウスの表現型解析を行い、生体内でNol9がリボソーム機能に関わること、Nol9の欠損がリボソーム病様の表現型を引き起こすことを明らかにした。これにより、新たなリボソーム病のモデルマウスを確立できた。さらに、次年度にリボソーム病でなぜ発がんリスクが上昇するのかについて解析するため、いくつかの発がんモデルマウスを立ち上げた。よって、達成度として概ね順調であるとした。
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今後の研究の推進方策 |
マウス表現型をさらに詳細に解析するとともに、リボソームの異常がどのように赤血球のアポトーシスを誘導して貧血様症状を誘導するのか解析を行う。また、p53欠損マウスとNol9欠損マウスを掛け合わせ、表現型が改善されるか検討を行う。その一方で、Nol9がどのようにリボソーム機能に関わるのか、生化学的・細胞生物学的な解析を行い、分子メカニズムを明らかにすることを試みる。
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