研究課題/領域番号 |
18K06964
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
川口 真紀子 宮崎大学, 医学部, 助教 (90405598)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HAI-2 / matriptase / EpCAM / SPINT2 / tufting enteropathyy |
研究実績の概要 |
すでに当研究室で維持しているHAI-2 floxedマウスと腸管上皮特異的にCreを発現するVillin-Creマウスを交配させ、腸管上皮特異的HAI-2 KOマウスを作製したところ、HAI-2 KOマウスは胎生期あるいは生後早期に死亡した。このことからHAI-2が腸管上皮の形態形成において重要な役割を有することが示唆された。 そこで、成体におけるHAI-2の機能解析のため、すでに維持している全身でタモキシフェン誘導性にCreを発現するROSA-Cre-ERT2マウスをHAI-2 floxedマウスと交配し、解析を行ったところ、タモキシフェン誘導後著しい体重減少がみられ、3日後には60%、6日目までにはすべてのマウスが死亡した。肉眼的解析からHAI-2欠損マウスでは腸管に強い表現型が観察され、腸の長さが有意に短くなっており、組織学的解析の結果、HAI-2欠損マウスではcongenital tufted enteropathy様の形態異常、腸上皮の強い傷害がみられ、杯細胞、パネート細胞がいずれも減少し、アポトーシスの亢進、腸上皮バリア機能の低下もみられた。また、小腸からのオルガノイド培養系を確立し、解析したところ、HAI-2欠損オルガノイドではEpcamの分解がみられ、タモキシフェン添加28時間後にはオルガノイドの崩壊がみられた。この現象は、HAI-2の標的プロテアーゼであるprostasinを同時に欠損させることで回避できた。このことから、HAI-2欠損に伴うprositasinの活性異常が、腸上皮の異常の原因の一つであることが示唆された。 しかしin vivo ではprostasinを同時に欠損させてもHAI-2 KOマウスの表現型は回避されず、今後さらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管上皮特異的HAI-2 KOマウスは胎生期あるいは生後早期に死亡したため、全身組織におけるタモキシフェン誘導性のHAI-2 コンディショナルKOマウスの作製を行い、成体における表現型を解析することができ、HAI-2が腸管において重要な役割を有することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
腸管上皮特異的HAI-2 KOマウスは胎生期あるいは生後早期に死亡したため、2018年度の解析には全身でタモキシフェン誘導性にCreを発現するROSA-Cre-ERT2マウスを用いた解析を行ったが、このマウスでは全身のほぼ全ての組織でHAI-2がKOされるため、腸管上皮におけるHAI-2の機能解析には腸管からオルガノイド培養の系を用いる必要がある。2018年度は小腸からのオルガノイド培養系を確立することができたが、今後は大腸からもオルガノイド培養を行い、機能解析に用いる予定である。また、腸管上皮特異的HAI-2 KOマウスを用いて胎生期の腸管の形態形成におけるHAI-2の機能解析や、タモキシフェン誘導性に腸管上皮特異的にCreを発現するVillin-CreERT2マウスの導入も検討する。さらに、HAI-2欠損オルガノイドの表現型がprostasinを同時に欠損することで回避できたことから、その詳細な分子メカニズムをオルガノド培養系とHAI-2/prostasin のダブルKOマウスを用いて解析する予定である。
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