研究課題/領域番号 |
18K06966
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研究機関 | 群馬パース大学 |
研究代表者 |
木村 鮎子 群馬パース大学, 保健科学部, 講師 (50553616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロテアソーム / N-ミリストイル化 / プロテオミクス / 癌 / 微小環境ストレス |
研究実績の概要 |
N-ミリストイル化は、タンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームを構成する60以上のサブユニット中で、唯一見いだされている脂質修飾である。本修飾は酵母からヒトに至るまで多くの真核生物で高度に保存されており、重要な役割をもつと考えられている。申請者はこれまでの研究から、本修飾が出芽酵母において、プロテアソームを核につなぎとめる働きをもち、さらに高温ストレス耐性などに関与することを明らかにしている。一方でヒトでは、N-ミリストイル化やプロテアソームの核局在化が癌化や癌の薬剤耐性に関わることを示す報告がある。これらの知見をもとに申請者は、ヒトでは、N-ミリストイル化がプロテアソームの細胞内局在調節を介して癌細胞の微小環境ストレスへの耐性発現に関わると予測し、本研究を計画した。 本年度は、様々な種類のがんに由来する培養細胞株を用いたウエスタンブロットによるN-ミリストイル化酵素の発現量比較を行い、リンパ腫・膵臓がん細胞株などで本酵素の顕著な増加を確認した。この中から、プロテアソームの活性変化と癌の薬剤耐性化との関りが報告されているリンパ腫細胞株について、N-ミリストイル化酵素の高発現細胞株・低発現細胞株を用いた核・細胞質中プロテアソームの精製と質量分析を行った。結果として、標準的な細胞培養条件下では、N-ミリストイル化酵素レベルの違いによる核/細胞質中のプロテアソームの存在比に顕著な違いは見られなかった。一方で、N-ミリストイル化酵素の存在量が高い細胞株では、プロテアソームが細胞骨格や核膜を構成する2つの中間径フィラメントのタンパク質と結合していることを示す結果が得られ、これらの相互作用が細胞骨格の構造変化によるプロテアソームの細胞局在調節に関わる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回解析を行った標準的な細胞培養条件下では、ミリストイル化酵素の発現レベルの違いによるプロテアソームの核/細胞質内での存在比に差異が見られなかったため、様々な増殖フェーズの細胞やストレス環境下に置かれた細胞を用いた解析を行う必要があると考えられるが、解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
N-ミリストイル化酵素の発現量の異なる癌細胞株やプロテアソームのN-ミリストイル化部位を変異させた細胞株などを用いて、低栄養・低酸素などのストレス環境下や様々な細胞増殖フェーズでのプロテアソームの細胞内局在や、微小環境ストレスによる種々の表現型変化の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
メーカーの値引き等により試薬購入費を当初の想定より安く抑えられたことなどから次年度使用額が生じたため、次年度の試薬購入費に充てていく予定である。
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