研究課題/領域番号 |
18K06968
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
池田 啓子 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (10265241)
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研究分担者 |
川上 潔 自治医科大学, 医学部, 教授 (10161283)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナトリウムポンプ / 酸化ストレス / アスコルビン酸 / 神経疾患 / ジストニア / 痙攣 / 麻痺 / 遺伝子欠損マウス |
研究実績の概要 |
ナトリウムポンプα2およびα3サブユニット遺伝子変異は、種々の神経疾患発症の原因となる。これら神経疾患に共通して見られる特徴として、痙攣、麻痺、ジストニア等の症状が発作的に出現すること、身体的・精神的ストレスが発作の契機となること、が挙げられる。私達はこれまで両遺伝子欠損マウスの解析を行い、病態モデルマウスとしての有用性を報告した。ごく最近、両遺伝子各々の欠損マウスでは脳内アスコルビン酸量が有意に低下していることを見出した。本研究で、①病態モデルマウス脳では、アスコルビン酸低下による脳内酸化ストレス障害の亢進、②ナトリウムポンプα2およびα3サブユニットと、アスコルビン酸輸送体との機能共役、③これら分子の遺伝学的相互作用、④電気生理学的手法を用いたニューロン・シナプス伝達特性に対するアスコルビン酸の効果の検定、を計画した。今年度は以下の結果を得た。①脳を各部位に分け、アスコルビン酸量をHPLCを用いて定量した。野生型に比べ、欠損マウスでは有意にアスコルビン酸が低下していている部位を同定した。予想と異なり、すべての部位において低下しているわけではないこと、低下している部位は症状の原発巣とされる部位と一致することが判明した。さらに、身体的ストレスをかけたマウスでは、脳内アスコルビン酸が大きく低下することを示唆する結果を得た。また、酸化ストレスマーカーの抗体を使って、脳の免疫染色・ウエスタンブロットを行ったところ、野生型に比べ、欠損マウスでは脳内酸化ストレス状態の亢進が示唆される結果を得たが、雌雄で亢進程度に差があることも判明した。③アスコルビン酸輸送体遺伝子欠損マウスを作成し、ナトリウムポンプα2およびα3サブユニット遺伝子欠損マウスとのかけあわせを行った。ダブル欠損マウスは通常飼育下で痙攣等の症状を発現することはないことを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①当初は脳全体のアスコルビン酸量を測定したが、値が大きくばらつくことがわかった。そのため、脳の各部位を迅速に取得する技術を開発したところ、野生型とモデル動物の間での差異を検出することができた。当初の計画した以上に、病態生理の一端に迫ることができた。②アスコルビン酸輸送体遺伝子欠損マウスとのかけあわせによるダブル欠損マウスを用いた行動実験について、頭数をそろえることができず、結果を出すことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
①雌雄それぞれでの比較も行うため、サンプル数を増やし、アスコルビン酸の定量を引き続き行う。ストレス下でのアスコルビン酸量の測定も例数をふやす予定である。②アスコルビン酸輸送体遺伝子欠損マウスとのかけあわせによるダブル欠損マウスを用いた行動実験のために、マウスのコロニーを拡大する。ダブル欠損マウスについても酸化ストレスマーカー等の免疫染色、ウエスタンブロットを行う。③各種酸化ストレスマーカーの、HPLCによる生化学的定量を行う。④電気生理学実験のセットアップを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品代金等の関係で「68円」の余りが出た。これは、翌年度分の消耗品代金に充てることが可能である。
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