研究課題/領域番号 |
18K06970
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
谷岡 利裕 昭和大学, 薬学部, 准教授 (80360585)
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研究分担者 |
篠崎 昇平 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (40622626)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GSNOR / beta cell / S-nitrosylation / iNOS / diabetes |
研究実績の概要 |
本研究では、S-ニトロソ化タンパク質からNOを取り除く酵素として知られるS-nitrosoglutathione reductase (GSNOR)を標的分子として膵β細胞における役割を解明すべく機能解析を行った。今年度は膵β細胞株INS-1 832細胞のGSNOR過剰発現細胞株を作製し、炎症性サイトカインであるIL-1β刺激による炎症反応をどの程度改善するか検討を行った。GSNOR過剰発現細胞はコントロール細胞と比較してIL-1β刺激によるTNF-α産生が抑制された。また、培養上清中のNitrite量を測定した結果、GSNOR過剰発現細胞では、コントロール細胞と比較して抑性された。さらに、IL-1β刺激GSNOR過剰発現細胞において、膵β細胞のマスターレギュレーターとして知られるPDX-1の発現がどうなるのかを解析したところ、コントロール細胞で認められた炎症性刺激によるPDX-1発現減少の程度が緩やかになることを見出した。現在は、我々が炎症反応においてPDX-1減少において明らかにしている経路であるGSK-3β-βカテニン-PDX-1経路における発現変化および各分子のニトロソ化の程度を検討しているところである。また、GSNOR活性化剤に向けたスクリーニングの系の確立に向けて、INS-1細胞にてアッセイ系を構築したところで、順次天然物化合物ライブラリーの化合物を添加することによりアッセイする予定である。ノックアウトのβ細胞を単離し、GSNOR欠損した際の炎症反応を解析した結果、in vitoroで得られた結果と同様、IL-1β刺激によるPDX-1の発現はWT由来のβ細胞において認められるPDX-1の発現減少がより顕著であった。以上のことから、GSNORは膵β細胞において炎症反応を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年4月1日より所属研究室の異動があり、研究環境を整えることに時間がかかったこと、また、新たな教育業務として複数の講義を担当することが多々あったため本研究の遂行が滞り、研究の進捗状況がやや遅れている。所属変更2年目となったことから前年度予定研究を繰り上げて行う予定である。実際には、すでに研究環境は整っており、計画を順当に進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は下記2点に関して詳細に解析を行う予定である。膵β細胞へ毒性を持つSTZを投与した野生型およびGSNOR KOマウス糖尿病モデルマウスを用いて、膵β細胞機能不全の程度を評価する。評価項目は血糖、血中インスリン濃度、血中遊離脂肪酸値、耐糖能、インスリン分泌能の変化を評価する。また、膵切片を用いて、インスリン、グルカゴン、PDX-1などの組織染色を行う。また、GSNOR活性化剤スクリーニング系を構築することを目的として、GSNOR活性化測定は酵素と基質を用いたアッセイを96 wellプレートで行う。酵素源としてはラットGSNOR発現ベクターを調製後、INS-1安定発現株を作製する。これらの細胞を用いて、本学が所有している天然化合物ライブラリーの化合物を順次作用させ、基質としてGSNO、補酵素としてNADHを添加した反応液を蛍光プレートリーダーで検出する。これらの解析を学部学生6名と実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年4月1日より所属研究室の異動があり、研究環境を整えることに時間がかかったこと、また、新たな教育業務として複数の講義を担当することが多々あったため本研究の遂行が滞り、研究の進捗状況がやや遅れている。所属変更2年目となったことから前年度予定研究を繰り上げて行う予定である。実際には、すでに研究環境は整っており、計画を順当に進めているところである。今年度はノックアウトの解析を中心に行う予定であり、動物維持費用、分子生物学用試薬、細胞培養用試薬、遺伝子工学用試薬を購入し、実験計画に従って使用する予定である。
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