研究課題/領域番号 |
18K06972
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
藤田 英俊 東京医科大学, 医学部, 講師 (90571802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウォルフラム症候群 / シノビオリン / 小胞体ストレス / β 細胞 / インスリン |
研究実績の概要 |
Wolfram 症候群 (ウォルフラム症候群)は、常染色体劣性遺伝性疾患であり、日本における患者数はおよそ200人である。代表的な遺伝性の一型糖尿病であり、いまだその根本的な治療法が確立していない疾患でもある。若年で糖尿病が発症し、内分泌代謝系、精神神経系を広範に障害することが知られている。その原因遺伝子として、Wolfram syndrome 1 (WFS1) が1998年に同定され、WFS1 は主に細胞内小器官である小胞体に存在する膜タンパク質として、小胞体ストレスの減弱に機能していると考えられている。これまでの研究により、この WFS1 の変異により、膵臓の β 細胞において、小胞体ストレスが高度に上昇し、糖尿病を引き起こすことが明らかになってきた。WFS1 遺伝子欠失マウスモデルを用いた研究から、糖尿病の発症には、タンパク質の分解制御に機能する E3 ユビキチンリガーゼであるシノビオリン(別名:HRD1)の発現の減弱が重要であることが報告された(Fonseca SG et al. J. Clin. Invest. 2010, 120:744-55.)。しかしながら、シノビオリンの発現の減弱による病態発症の分子機序についてはいまだ不明のままである。応募者らはこれまで小胞体ストレス応答においてタンパク質分解に機能するシノビオリンの研究に従事してきた。本研究では、膵臓の β 細胞特異的なシノビオリンノックアウトマウスを作製・解析し、ウォルフラム症候群で認められる膵臓 β 細胞におけるシノビオリンの発現の減弱による糖尿病発症の分子基盤を明らかにすることを目的とした。今年度は、膵臓の β 細胞特異的なシノビオリンノックアウトマウスの膵臓の組織学的解析を行うとともに、アポトーシスなど種種のマーカーを用いた免疫染色を行った。さらに、膵臓組織より酵素学的に膵島の回収を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓の β 細胞特異的なシノビオリンノックアウトマウスの系統維持は順調に進んでいるとともに、マウス臓器のサンプリングに加え、細胞レベルでβ 細胞由来の培養細胞の培養も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
シノビオリンは E3 ユビキチンリガーゼであり、これまでコラーゲンや転写コアクチベータ PGC-1β など種々の因子を標的とし、それをユビキチン化し、分解することで様々な表現型を示すことを報告してきた。そこで、インスリン分泌に関わる標的分子について検討し、シノビオリンより下流のシグナル伝達を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していたキットの購入費が少なく済んだため。試薬購入に使用する予定である。
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