20番染色体長腕上に存在する骨髄異形成症候群(MDS)疾患関連候補遺伝子を同定し研究を継続し、助成期間において次のことを明らかにした。 ①PLCG1遺伝子発現低下はMDSの予後と関連し、予後予測因子である。:発現低下がMDS患者の生存期間と関連すること、病勢の進展と関連することを示した。さらにPLCG1発現低下が独立した予後予測因子であり、既存の予後予測因子と組み合わせることでより予後予測に関して患者を層別化することができることを示した。 ②BCAS4遺伝子発現低下の生物学的意義を検討した。BCAS4に関してはその機能はこれまでよくわかっておらず、構造からは細胞内小胞の輸送に関連していることが想定されている。まず、細胞増殖との関連を明らかにするため発現レベルの調節が可能なBCAS4発現ベクターを構築しMDS患者由来細胞株においてBCAS4過剰発現を解析した。その結果BCAS4に過剰発現は細胞増殖を抑制すると同時に形態学的には分化傾向を示した。細胞周期の解析においては、G1停止が認められ、またsubG1集団の増加からアポプトーシスの誘導が推測された。分子レベルでは、サイクリンD1の減少、アポプトーシス関連分子の発現誘導が認められた。一方RNAiを用いた発現遮断実験では細胞周期解析でS期細胞の増加などが観察された。BCAS4の細胞増殖抑制、細胞周期G1停止、アポプトーシス誘導に関する具体的機能についての解析を継続している。 ③残り124遺伝子の解析:未解析であった共通欠失領域内の124遺伝子に関して次世代シークエンサーによる解析を行った。しかしrecurrentな変異は認められなかった。引き続き発現解析を継続し、約半数の遺伝子の解析を終了したが、臨床的意義を認めたものはなかった。
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