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2018 年度 実施状況報告書

代謝性疾患時における細胞外小胞分泌と血管機能障害発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06974
研究機関星薬科大学

研究代表者

小林 恒雄  星薬科大学, 薬学部, 教授 (90339523)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード血管障害 / 細胞外小胞 / 代謝性疾患 / 血管機能
研究実績の概要

平成30年度は、モデル動物を用い生体内因子の相関性解析を中心として、機能的細胞外小胞( EVs) 種、標的血管部位、血管細胞、血液因子等の重要なターゲットについて選定を行った。 糖尿病マウスから抽出したEVs 量は 正常動物EVs 量と比較して増加が認められた。これらEVs をマウス摘出胸部大動脈に処置し血管反応を検討したところ、糖尿病 EVs 処置によって、強い内皮依存性弛緩反応の減弱が認められた。 このEVs 中のタンパク質スクリーニングを行ったところ、特にERK1/2 が多く含有されており、加えて糖尿病 EVs は正常動物MPs と比較して ERK1/2 を多く含有していた。さらに、EVs 中の ERK1/2 活性を阻害すると血管への作用は消失した。 次に、糖尿病マウスにERK1/2活性を阻害するPD98059を慢性投与すると、NO産生を増加させ、弛緩反応を改善することが示唆された。 EVsの遊離促進因子として報告されているインドキシル硫酸 (indoxyl sulfate; IS)は、作用が明らかではないため、まず血管への直接的影響を検討した。 ラット胸部大動脈や腸間膜動脈において、IS処置は、内皮依存性弛緩反応の減弱が認められた。その機序として、ISは、organic anion transporterを介して細胞内へ移行し、superoxideを産生することでこれらの弛緩反応を減弱させていることが明らかとなった。 以上のことから、EVs は ERK1/2 を内在し、特に糖尿病時の EVs は、正常時の EVs と比較して ERK1/2 が増加することによって内皮機能障害を引き起こしている事が明らかになった。よって内皮細胞内やEVs中のERK1/2活性の阻害や、IS のようなEV 誘発因子の阻害によって新たな糖尿病性血管内皮障害の改善アプローチに繋がる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度は、疾患モデルにおける生体内因子の相関性解析を中心として、機能的 EVs 種、臓器間機能、標的血管部位、血管細胞、血液因子等の重要なターゲットを見いだすことを達成基準としている。 現在の進捗状況は、血液中に存在するEVs は ERK1/2 を内在し、特に糖尿病時の EVs は、正常時の EVs と比較して ERK1/2 が増加することによって胸部大動脈の内皮機能障害を引き起こしている事が明らかにした。更に、内皮細胞内 ERK1/2活性の阻害や、IS のようなEV 誘発因子の阻害、腸間膜動脈、胸部大動脈など重要なターゲットを見いだした。ERK阻害薬の慢性投与は、in vitro によって産生されるEVs と in vivo 中に存在するEVs の病態生理が一致している可能性を示唆し、今後の実験において大変有意義なデータである。 以上の結果は、糖尿病時における血管障害において、新規メカニズム、新規治療薬のターゲットが選定され、更に、血管内皮機能と EVsの相関関係から、血管障害の新規バイオマーカーとしての早期診断にも応用できる可能性がある。この様な結果から、予算の関係により規模が縮小してはいるものの、研究の焦点の絞り込みも進み、研究はおおむね順調である。

今後の研究の推進方策

EVは、内皮機能低下、ERK活性によって誘発していることが明らかになったので、更に分子機構を明らかにしたい。 種々の代謝性疾患モデルと異常が認められる血液因子等(IS、サイトカイン、Poly(I:C) (Polyinosinic-polycytidylic acid sodium salt)など)にも着目し、疾患に起因した EVs 放出と血管機能障害と既存の治療薬の慢性投与等を行いつつ、より詳細な関係性を明らかにする。 糖尿病モデル動物、及び高脂血症動物を用いて、EVs 種と血液因子、血管部位作用の関係性を因子解析し、in vitro、ex vivo 実験から、生体内 EVs 産生細胞、産生機序、EVs 種-血管シグナル伝達解析を統合し、疾患動物に投与する EVs 代謝疾患、血管機能障害治療薬を開発することを達成目標とする。昨年度の結果から、ERKが重要な役割をしていることが明らかになったので、人工的に作成した EVs やリポソームに、ERK サイレンシング遺伝子(miRNA インヒビター;RNA mimic 、pre-miRNA 発現プラスミド等)を導入し、それらを ob/ob 肥満マウス、高脂血症負荷マウス、db/db マウス糖尿病モデルに投与し、代謝機能、血管内皮細胞機能低下への改善効果を検討する予定である。本研究による生体内機能、膜構造の解析の実験データは、フローサイトメトリー等を用いた高い分離識別能力による血管障害バイオマーカーとしても研究を進展させる。本研究の EVs の構造解析の結果をもとに、様々な血管障害モデルとの比較検討を行い、血管障害の進行状態をも診断できるバイオマーカーとしても応用展開する予定である。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (21件)

  • [雑誌論文] Acute Exposure to Indoxyl Sulfate Impairs Endothelium-Dependent Vasorelaxation in Rat Aorta2019

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Takayuki、Takayanagi Keisuke、Kojima Mihoka、Taguchi Kumiko、Kobayashi Tsuneo
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 338~338

    • DOI

      10.3390/ijms20020338

    • 査読あり
  • [学会発表] 内皮依存性弛緩反応に対するindoxyl sulfate急性暴露の影響は動脈部位で異なる2019

    • 著者名/発表者名
      松本 貴之、髙柳 奎介、小嶋 美帆香、香留 智樹、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      第48回日本心脈管作動物質学会
  • [学会発表] 植物由来ポリフェノールであるMorinとQuercetinによる糖尿病性血管障害における有効性の比較検討2019

    • 著者名/発表者名
      田野育実、田口久美子、川上優花、中島花也、我妻未菜美、沼生千秋、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      第91回日本薬理学会年会
  • [学会発表] GLP-1 は GRK2 活性抑制により糖尿病性血管内皮障害を改善する2019

    • 著者名/発表者名
      別所七海、田口久美子、針ヶ谷苑子、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      第91回日本薬理学会年会
  • [学会発表] ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット頸動脈におけるATP、ADP、UTP、UDPによる反応性の検討2019

    • 著者名/発表者名
      淺野 友里、松本 貴之、髙柳 奎介、小嶋 美帆香、香留 智樹、石引 明莉、今村 沙弥、小堺 美佑、三枝 佳菜、瀧本 佳奈子、林田 悠佳、戸田 武、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 高インスリン暴露ラット頸動脈における収縮反応に対するequolの影響2019

    • 著者名/発表者名
      林田 悠佳、松本 貴之、髙柳 奎介、小嶋 美帆香、香留 智樹、戸田 武、淺野 友里、石引 明莉、今村 沙弥、小堺 美佑、三枝 佳菜、瀧本 佳奈子、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 自然発症高血圧ラット上腸間膜動脈における内皮由来過分極因子による弛緩反応に対するカルシウム活性化カリウムチャネルの関与2019

    • 著者名/発表者名
      市川 将成、松本 貴之、岩崎 瑞生、大平 聖悟、田口 可奈、野口 智司、波多野 ことみ、東田 佳子、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] ラット上腸間膜動脈の内皮由来弛緩因子誘発弛緩反応に対するindoxyl sulfate急性暴露の影響2019

    • 著者名/発表者名
      香留 智樹、松本 貴之、髙柳 奎介、小嶋 美帆香、戸田 武、林田 悠佳、淺野 友里、石引 明莉、今村 沙弥、小堺 美佑、三枝 佳菜、瀧本 佳奈子、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 慢性2型糖尿病ラット大腿動脈におけるアドレナリン受容体作動薬の反応変化2019

    • 著者名/発表者名
      小嶋 美帆香、松本 貴之、髙柳 奎介、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 慢性2型糖尿病ラット摘出胸部大動脈におけるuridine adenosine tetraphosphateの血管反応性2019

    • 著者名/発表者名
      髙柳 奎介、松本 貴之、小嶋 美帆香、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] ラット胸部大動脈におけるインドキシル硫酸急性暴露の影響2019

    • 著者名/発表者名
      戸田 武、松本 貴之、髙柳奎介、小嶋美帆香、香留智樹、吉永 俊大、原 史織、丸山 真由子、山中 達也、福田 美穂、井下田 浩実、石内 愛莉、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 自然発症高血圧ラットの総頸動脈及び腎動脈におけるprotease-activated receptor 2 agonist誘発弛緩反応2019

    • 著者名/発表者名
      波多野 ことみ、松本 貴之、東田 佳子、市川 将成、岩崎 瑞生、大平 聖悟、田口 可奈、野口 智司、田口 久美子、小林 恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] Angiotensin II は GRK2 発現を誘導し血管内皮障害を引き起こす2019

    • 著者名/発表者名
      磯田裕美子、田口久美子、別所七海、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] Fenofibrateは高脂肪食時の減弱したインスリン誘発血管弛緩反応を改善する2019

    • 著者名/発表者名
      針ヶ谷苑子、田口久美子、別所七海、林史也、原光輝、林優里奈、松本あかり、田中優衣、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 植物性ポリフェノール morinおよびquercetin による糖尿病時血管弛緩機序、有効性の比較検討2019

    • 著者名/発表者名
      谷本日菜子、田口久美子、田野育実、川上優花、中島花也、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] Quercetin とその血中代謝物による糖尿病時血管障害への影響の比較検討2019

    • 著者名/発表者名
      市川佳枝、田口久美子、田野育実、川上優花、中島花也、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 糖尿病マウス胸部大動脈におけるERK1/2 阻害薬の影響2019

    • 著者名/発表者名
      西浦駿、田口久美子、成松遥、別所七海、金子望、馬場玖瑠実、瀬戸山和希、伊藤智里、舟見佳夏、前田莉邑、孫田一輝、佐々木実枝、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 糖尿病時のMPsに内在する ERK1/2 が血管反応に与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      金子望、田口久美子、成松遥、別所七海、馬場玖瑠実、瀬戸山和希、伊藤智里、舟見佳夏、前田莉邑、孫田一輝、佐々木実枝、西浦駿、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 糖尿病性血管障害時におけるイチョウ葉エキスの血管弛緩メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      田野育実、田口久美子、川上優花、中島花也、中田 麻美、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] GRK2亢進を標的とした糖尿病性血管合併症に対するGLP-1の効果2019

    • 著者名/発表者名
      別所七海、田口久美子、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] ラット摘出胸部大動脈における弛緩反応に対するインドキシル硫酸暴露の影響2018

    • 著者名/発表者名
      高柳奎介、松本貴之、吉永俊大、小嶋美帆香、山中達也、福田美穂、井下田浩実、石内愛莉、原史織、丸山真由子、田口久美子、小林恒雄
    • 学会等名
      第60回日本平滑筋学会総会
  • [学会発表] 血管内皮障害は、マイクロパーティクルに含有されるERK1/2が原因で引き起こされる2018

    • 著者名/発表者名
      成松遥、田口久美子、竹下菜美穂、金子望、馬場玖瑠実、瀬戸山和希、伊藤智里、舟見佳夏、前田莉邑、孫田一輝、佐々木実枝、西浦駿、松本貴之、小林恒雄
    • 学会等名
      第62回日本薬学会関東支部大会

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公開日: 2019-12-27  

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