研究課題/領域番号 |
18K06975
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
柳谷 朗子 沖縄科学技術大学院大学, 細胞シグナルユニット, 研究員 (30608138)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 転写後制御 / mRNA分解 / 脱アデニル化 / CCR4-NOT複合体 / インスリン生合成 |
研究実績の概要 |
2019年度は、脱アデニル化活性のあるCNOT7のCnot7欠損マウスから単離した膵島を用いてグルコース応答性インスリン分泌におけるCCR4-NOT複合体による転写後制御の分子機構を解析した。Cnot7欠損膵β細胞ではインスリン生合成が抑制されインスリンの前駆体であるプロインスリンが増大し、成熟インスリン量が低下していることを免疫組織染色により明らかにした。またCNOT7と、CNOT7と同様に脱アデニル化活性がありアミノ酸配列の相同性が高いCNOT8の膵β細胞内局在が異なることを免疫組織染色により解明した。以上の結果より、膵β細胞内のインスリン生合成におけるCNOT7とCNOT8の機能が異なる可能性が示唆された。また、CNOT7、CNOT8、CCR4-NOT複合体に結合しないCNOT7とCNOT8の変異体を用いた免疫沈降法により、CNOT8に特異的に結合するRNA結合蛋白質を同定した。さらにこのRNA結合蛋白質がインスリンの二次構造の形成に必須なプロインスリン分子内のジスルフィド結合を導入するPDI酸化酵素であるPrdx4 mRNAと結合することを、RNA免疫沈降法により明らかにした。以上の結果からインスリン生合成に重要な遺伝子発現が、CCR4-NOT複合体を介した転写後制御で制御されている分子機構を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019度の研究では、Cnot7欠損マウスにおけるインスリン生合成不全を引き起こす分子機構をさらに明らかにすることができた。また、マウス膵島のパラフィン切片を使用した組織免疫染色に加えて、凍結切片を使用することによりCNOT7とCNOT8の膵β細胞内局在を明らかにすることができた。また、プロインスリンとインスリンに対する解像度の良い免疫染色像を得ることができた。さらに、CNOT7とCNOT8の変異体を用いることで、CNOT7とCNOT8のインスリン生合成における機能解析を行った。Prdx4 mRNAと同定されたRNA結合蛋白質のリコンビナント蛋白質を用いて、両者の相互作用をゲルシフトアッセイにより解析した。その結果、両者が直接結合することが明らかとなった。また、FLAGタグ標識Prdx4 RNAとインスリン分泌細胞である膵β細胞株MIN6細胞抽出液と抗FLAG抗体を使用した免疫沈降により、Prdx4 mRNAと同定されたRNA結合蛋白質が相互作用することを明らかにした。MIN6細胞において、同定されたRNA結合蛋白質をノックダウンし、そのPrdx4 mRNAの分解に与える影響をActinomycin Dチェイス法により解析した結果、Prdx4 mRNAが安定化することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
Cnot7欠損膵β細胞ではPDI酸化酵素であるPRDX4が減少することにより、Cnot7欠損マウスは酸化ストレスに対して脆弱であると考えられる。そこで血糖値と遊離脂肪酸の上昇に伴う酸化ストレスに対するCnot7欠損マウスの耐性を長期間高脂肪食をマウスに負荷することで解析する。また慢性的な高血糖と高遊離脂肪酸によって誘起される小胞体ストレスに対するCnot7欠損膵β細胞の耐性も解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高脂肪食またはコントロール食を長期間与えた本研究に必要なマウスの準備に、予想以上に時間が掛かった為、2019年度に予定していたRNA-seq解析試薬の購入を2020年度に行う。2020年度は本研究成果を国内外の学会に参加し発表する。また本研究成果を国際的に著名な科学雑誌で発表する。
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