研究課題
2020年度は、膵β細胞の恒常性維持に必要なCCR4-NOT複合体を介した転写後制御の分子機構を解明する為に以下の実験を行った。CNOT7またはCNOT8を過剰発現させた細胞抽出液を用いた免疫沈降法により、CNOT7には結合しないがCNOT8に特異的に結合するRNA結合蛋白質を同定した。またこのRNA結合蛋白質とCNOT8の結合部位がCNOT8のC末端であることを、免疫沈降法により明らかにした。さらに、このRNA結合蛋白質の組み換え蛋白質を作製し、インスリンの二次構造の形成に必須なプロインスリン分子内のジスルフィド結合を導入するPDI酸化酵素であるPrdx4 mRNAと直接に結合することを、ゲルシフトアッセイにより明らかにした。以上の実験成果をまとめて、CCR4-NOT複合体がCNOT8とRNA結合蛋白質を介してPrdx4 mRNAの分解を制御することでインスリンの生合成を制御するという分子機構を解明した。CCR4-NOT複合体の構成分子の内、脱アデニル化活性のあるCNOT7とCNOT8はそのアミノ酸配列相同性の高さから、従来同じ機能を担うと考えられていた。本研究により、膵β細胞においてはCNOT7とCNOT8はそれぞれ異なる標的mRNAの安定性を制御している可能性を示すことができた。さらに、CNOT7とCNOT8はそれぞれ異なるRNA結合蛋白質と相互作用することにより標的mRNAの分解を制御することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
2020度の研究は、膵β細胞の機能において同じ脱アデニル化酵素活性をもつCNOT7とCNOT8がインスリン生合成において異なる機能を担う可能性を明らかにした。また、Cnot7欠損マウスにおけるインスリン生合成不全を引き起こす分子機構に関与するRNA結合蛋白質を同定することができた。shRNAを用いてRNA結合蛋白質の発現を抑制したところ、Prdx4 mRNAとCCR4-NOT複合体が阻害されることをRNA免疫沈降により明らかにした。現在、CNOT8を介したCCR4-NOT複合体によるPrdx4 mRNAの分解機構を解明した論文を投稿準備中である。
全ての実験成果をまとめて、論文投稿準備中である。
コロナの感染拡大により試薬の到着の遅れなどで当初実験計画よりも実験が遅れてしまった為。2021年度に試薬の購入に使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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