研究課題
本年度は、作成した下記4群のマウスモデルに対し、遺伝学的解析を行った。①Glo1 WT/VB6(+): コントロール群、②Glo1 WT/VB6(-): VB6欠乏群、③Glo1 KO/VB6(+): Glo1遺伝子欠損群、④Glo1 KO/VB6(-): Glo1遺伝子欠損とVB6欠乏のコンビネーション効果群4週間のVB6欠乏餌の給餌後、反応性カルボニル化合物のひとつであるメチルグリオキサールが蓄積していた脳の3部位[前頭皮質(PFC)、海馬(HIP)、線条体(STR)]において、RNA-seqを用いた網羅的な遺伝子発現解析及びネットワーク解析を行った。その結果、VB6欠乏単独、及びGlo1 KO単独の効果はそれほど大きくなく、両者が合わさったときにはじめて、PFC特異的に遺伝子発現に大きな影響を与えていることが明らかとなった。このときPFCで有意に変動した286遺伝子については、シナプス関連遺伝子及び自閉症関連遺伝子を有意に多く含むことが明らかとなり、また興奮性神経細胞や内皮細胞由来の遺伝子を多く含むことが明らかとなった。さらに、PFCにおいてネットワーク解析(WGCNA)を行なったところ、Glo1 KOとVB6欠乏を組み合わせた際に、RNA splicingやミトコンドリア機能、シナプスに関連したネットワークが障害を受けている可能性が示唆された。このうち、RNA splicing機能について更にデータを解析した結果、Alternative splicingを受け異なるisoformを発現する遺伝子群は、シナプス関連遺伝子を有意に多く含んでいることも明らかになった。そこで次に、PFCにおける電気生理学的な変化について検討を行なったところ、Glo1遺伝子欠損とVB6欠乏を組み合わせた群において、静止膜電位の増加が認められ、活動電位が発生しやすい状態にあることが見出された。
2: おおむね順調に進展している
順調である。本年度に予定していた、マウスモデルの遺伝学的解析による障害分子基盤の同定を着実に終えた。最終年度である来年度は、これまでに明らかにした障害分子基盤を確認し、論文としてまとめたいと考えている。
来年度以降は計画通り、障害分子基盤の確認、特に前頭前皮質のミトコンドリア機能の測定を行う。さらに、ネットワーク解析で同定されたHub geneをレスキューすることによる効果についても、併せて検討していく。
カルボニルストレス関連物質の測定実験が基本的には大方予定通り終えているが、一部、測定系の確立ができていない部分があり来年度に行う予定であるため、その分の予算を来年度に繰り越した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 ページ: 24334~24342
10.1073/pnas.1907982116
Genome Biology
巻: 20 ページ: 135
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http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/index.html