研究課題/領域番号 |
18K06978
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
平林 哲也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (90345025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リン脂質 / ホスホリパーゼA2 / リゾホスホリパーゼ / コリン / 肝臓 / 神経変性 / メチル基 |
研究実績の概要 |
本年度はリン脂質分解酵素の欠損マウス群の表現型解析により、主に以下のような研究の進展があった。 (1)肝臓においてホスファチジルコリン→リゾホスファチジルコリン→グリセロホスホコリンとリン脂質を分解するホスホリパーゼA2とリゾホスホリパーゼとして、iPLA2γとiPLA2θに着目し、両遺伝子の欠損マウスの表現型を比較した。肝臓の発現遺伝子変化をマイクロアレイおよび定量的PCRにより解析すると、両欠損マウスともメチオニン回路を構成する酵素群の発現が誘導されたのに対し、lipogenesisに関わる遺伝子群は発現が低下していた。血液の生化学検査においても、低血糖、トリグリセリドの低下、leptinの減少など、メチル基不足を示唆する表現型が両欠損マウスで観察され、肝臓におけるリン脂質分解をiPLA2γとiPLA2θが促進することで生じた内因性コリンがベタインを経由してメチオニン回路にメチル基を供給するという、これまでの仮説を支持する結果であった。一方、肝臓中のトリグリセリド量は、メチオニン・コリン欠乏食を野生型マウスに与えた場合では増加するのに対し、両欠損マウスでは減少していた。 (2) Nes-Creリコンビナーゼを用いて神経特異的にiPLA2δとiPLA2θを欠損させたダブル欠損マウスは、若齢期より神経変性を示し、歩行異常、振戦、骨格筋萎縮などを呈した。組織学的解析を行うと、脳および脊髄において早期にp62の蓄積とグリオーシスが生じ、それに伴ってミエリンを構成する脂質群の減少が観察された。大腿筋の神経・筋接合部位のdeneravationが生じていたことから、筋萎縮は神経原性と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染の拡大により、各種遺伝子改変マウスの作製、交配、維持に制限が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点に重点的に取り組む。 (1)神経変性に伴って生じるミエリンの構成脂質の変動をリピドミクス解析により詳細に行う。 (2)リン脂質分解後のコリン代謝やメチル基の流れを初代培養細胞を用いて把握する。 (3)肝臓、神経系以外の組織での内因性コリン産生経路の機能解析をさらに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの解析にかかる費用計上が次年度となったため。
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