研究課題/領域番号 |
18K06980
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
谷野 美智枝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90360908)
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研究分担者 |
北村 秀光 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40360531)
榊原 純 (小西純) 北海道大学, 大学病院, 講師 (50374278)
畠山 鎮次 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70294973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 脱ユビキチン化酵素 / OTUB-1 / 上皮間葉移行 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、悪性胸膜中皮腫におけるOTUB1の役割、表現型を調べることを目的とした。昨年度CRISPR/Cas9 systemを用いて樹立した、OTUB1ノックダウン211H細胞株を用いてトランスウェル、マトリゲルアッセイを施行し遊走能、浸潤能を、増殖曲線で増殖能の解析を行った。また、患者検体として、剖検標本14症例を用いて、OTUB1の免疫化学染色を行った。染色強度と染色割合から染色スコアを算出し、年齢、性別、アスベスト曝露の有無、組織型、全生存期間、転移臓器数の6項目に対し、カイ二乗検定を用いて臨床病理学的か解析を行った。In vitroの研究では悪性形質の変化に着目して表現型の解析を行った。OTUB1ノックダウン211H細胞株ではコントロール211H株と比較しての遊走能、浸潤能の低下を認めた。また、剖検検体を用いたOTUB1の免疫組織化学染色では、ヒト悪性胸膜中皮腫においてOTUB1は細胞質、核で発現を認め、正常胸膜中皮細胞と比較し、OTUB1が高発現していることが確認された。しかし、染色スコアと臨床予後を含めた臨床病理学的検討では相関を認めなかった。昨年度の研究結果を合わせると、ヒト悪性中皮腫において高発現しているOTUB1は、リン酸化Smad2/3のユビキチン化を阻害し間葉系の表現型へ誘導することによって悪性形質に関与している可能性が示唆された。臨床検体において悪性度との相関が見られなかったことに関しては症例数の不足や固定条件の違いなどが関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroの検討とヒト悪性胸膜中皮腫を用いた解析を行い結果が出ている。昨年度の研究成果を合わせ、OTUB1を介した脱ユビキチンにより悪性中皮腫細胞内で異常なタンパクの集積が起き、上皮間葉移行を介した悪性化を引き起こしている可能性が示唆される。来年度はさらにそのメカニズムを調べる予定である。研究進達状況はおおむね順調に進展しているものと考えます。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroの検討では、OTUB1は悪性中皮腫細胞株において高発現しており、リン酸化Smad2/3のユビキチン化を阻害することにより間葉系の表現型を獲得して悪性形質に関与している可能性が示唆された。Cadherin switchingが見られなかった原因として中皮細胞は上皮細胞と異なる性質を示すことや、用いた細胞が上皮及び間葉系形質の両方を持ち合わせる二相型であったことが原因の可能性がある。今後は、MAPKやPI3K/AKT経路のシグナルの関与は明らかにするとともにOTUB1によるタンパク発現を網羅的に解析するためにプロテオミクス解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究室内に装備されている試薬などを用いたため余剰金が生じたが、次年度にはプロテオミクス解析などを含めた研究での消耗品費としての使用や学会発表、英文投稿料金などに用いる予定である。
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