研究課題/領域番号 |
18K06981
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉岡 年明 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (80302264)
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研究分担者 |
南條 博 秋田大学, 医学部附属病院, 准教授 (70250892)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸がん肝転移 / Heregulin / 分子標的療法 |
研究実績の概要 |
本研究では, 1) 大腸癌肝転移において, 肝細胞がHeregulin(HRG)を産生するメカニズムについての解明. 2) HRGの肝再生への関与についての解明. 3) 大腸癌肝転移巣に対する, HRG関連分子を介した新規の分子標的療法の検討を目的とする. 令和2年度の実績としては, 目的1)において, 親株のヒト大腸癌細胞LS174Tと高肝転移ヒト大腸癌細胞LS-LM6にDNA microarrayを行い, 高肝転移細胞で発現が上昇した幾つかの分子について, これらの分子のタンパクをラットやマウス初代培養肝細胞や市販の培養肝細胞に投与して, 肝細胞のHRG産生に対する影響を引き続き検討しているが, まだ肝細胞のHRG産生を促す因子の同定には至っていない. 目的2)のHRGの肝再生への関与についての解明については, 肝細胞特異的なHRGのConditionalKnock out(KO)マウスを用いて, 肝再生においてHRGが果たす影響を検討する予定だが, まだ実験できるほど進展していない. 目的3)のHRG関連分子を介した新規の分子標的療法に関する検討については, HRGのレセプターであるErbB3(HER3)に対して, 共同研究者と共に新たに作製した抗体(抗HER3抗体)に対する検討を加えた. In vitroでは, 大腸癌細胞を始めとした様々な癌細胞のHER3を認識し, HRGを加えても, HRGの結合を抑制してHER3のリン酸化を抑制し, 増殖を抑制することがわかった. また, in vivoでは, ヒト手術検体中の大腸癌を認識することが判明した. この新規のHER3抗体は, ヌードマウス皮下のヒト大腸癌細胞や高肝転移ヒト大腸癌細胞の増殖を抑制することが判明したことから, 治療効果が期待できる. この結果をまとめて共同研究者と共に論文発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の目的1)に関しては, 肝細胞のHRG産生を促す, 肝転移した癌細胞側が出す因子がまだ同定されていないので, 引き続き検討を進めていく. 目的2)においては, HRGのconditional KOマウスを用いて, 肝再生においてHRGが果たす影響を検討する予定だったが, マウスの作製が予定通り進んでおらず, まだ実験できるほど進展していない. 目的3)の大腸癌肝転移巣に対する, HRG関連分子を介した新規の分子標的療法の検討については, 共同研究者と新規のErbB3(HER3)抗体を作製し, この抗体はHRGのHER3に対する結合を阻害し, in vito及びin vivoでの, 高肝転移ヒト大腸癌細胞も含めたヒト大腸癌細胞の増殖を抑制することが判明した. 大腸癌の進展を抑制する期待が持たれる新規のHRG関連抗体を作製することができたことから, 目的3)においては達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的1)に関して, 肝細胞がHRGを産生するメカニズムについての解明のため, 引き続き, DNA microarrayの結果に基づいて, HRG産生を促す肝転移する癌細胞側の因子の同定に努め, その因子が判明した場合は, 約50症例の大腸癌肝転移手術検体を用いて, ヒトでも同様のメカニズムが働いているのか, また, 臨床病理学的な影響も含めて検討する. 研究の目的2) HRGの肝再生への関与についての解明については, 肝細胞でのHRG conditional KOマウスの作製を進め, これらをを用いてHRGが果たす影響を検討していく. 研究の目的3)については, 大腸癌の進展を抑制する効果が期待できる新規のErbB3(HER3)抗体を作製してその性状を報告した. 今後は, この抗体が, 大腸癌細胞に対して他にどのような効果があるのか検討を加えていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
HRG KOマウスの作製も含めて, 研究の遂行に想定した以上の時間がかかってしまった. また, 研究者の多忙などのため当初の計画が遅延した. そのため, 予算の使用を伴う研究の進展が見られなかった. 研究の目的を達成するために, 1年間の延長を申請し許可されたため, 計画の実行と完成に向けて研究を進めていく.
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