研究実績の概要 |
これまでの研究成果から高悪性度胃癌のサブタイプとして同定された胎児形質胃癌に特徴的な癌関連遺伝子を網羅的遺伝子解析データベースから抽出し、多数の臨床検体を対象として発現を調べた。 まず、既に分子標的薬の存在するHER2の陽性所見は、このサブタイプの胃癌では比較的高頻度(30-40%)に認められ、抗HER2抗体薬の適用となりやすいことが明らかになった。また新規の治療標的候補分子や腫瘍免疫回避関連分子の中に、このサブタイプで比較的特異的に高発現している分子を複数同定した。臨床検体を対象とした免疫染色による発現検討でもこれらの所見が確認されたが、今後はさらにこれらの遺伝子増幅や悪性度との関連について、対象症例を増やして解析を進めている。 これまでは主に進行癌を対象に検討を行ってきたが、早期胃癌における胎児形質の意義についても検討を実施した。粘膜下層浸潤癌の外科切除症例約200例を対象に、胎児形質マーカー(AFP, SALL4, GPC3, CLDN6)の発現を調べた所、これらの陽性所見は脈管侵襲などの高悪性度因子との有意な相関が認められた。今後は300例程度まで解析症例を増やし、胎児形質が早期胃癌においてリンパ節転移リスク因子となるか検討を行う。 これらの成果により、悪性度の高い胎児形質癌において有力な分子標的薬候補の同定や成り立ちの理解、また早期胃癌においては局所切除の妥当性の指標となる知見が得られることが期待される。
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