研究実績の概要 |
RapG蛋白が癌細胞の浸潤能に与える影響を培養肺癌細胞A549の3次元培養系を用いて実験的に検討した。恒常活性型Rap1B(G12V,G63E)Rap2B(G12V,G63E)不活型Rap1B (S17N)、Rap2B (S17N)、不活性化因子としてRap1GAP,Rap1GAP2全長cDNAおよびそのshRNAをA549細胞に発現させた。RhoG蛋白Cdc42が浸潤を誘導したのに対してRapG蛋白の修飾では浸潤性の変化を見出せなかった。そこで癌細胞の浸潤を制御する分子のプロテオーム探索には癌細胞の浸潤制御分子としてこれまでに代表者が報告を行ったcortactinと結合する分子を対象として実験系の確立を目指した。安定同位体で標識した浸潤性乳癌細胞MDA-MB231にcortactin-ペルオキシダーゼ(APEX)を発現させcortactin結合分子を細胞内でビオチン標識し、ストレプトアビジンビーズで回収、FT-MS/MS(LTQ Orbitrap Velos ETD)を用いて質量分析した。その結果、同定された蛋白は308個、heavy/light比>=2で特異的な結合と考えられた蛋白133個、databaseと照合し乳癌細胞MCF7に比較して浸潤能の高いMDA-MB231で高発現し乳癌症例の予後不良と相関する分子としてGART, ANXA2, GFPT1, VARS, PHLDB2, LUZP1, NCAPG, BAG2, ARHGAP29, MAP1B, MPP1, DYNC1H1が同定された。shRNAを作製しMDA-MB231に発現させ3次元オルガノイド培養系での浸潤能、2次元での細胞運動の変化を検討した結果、GART, ANXA2, GFPT1, VARS, LUZP1, BAG2, ARHGAP29, MAP1Bにおいて浸潤能、運動能の低下が認められ、癌細胞の浸潤制御分子である可能性が示唆された。
|