研究課題/領域番号 |
18K06984
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
明石 巧 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (60242202)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RapG蛋白 / 癌浸潤 / 質量分析 / プロテオーム |
研究実績の概要 |
癌細胞浸潤制御分子の候補であるcortactinと協調して乳癌細胞の浸潤を制御する分子として2018年度は細胞内でcortactinの近傍に局在する8個の分子を同定した。2019年度は細胞内標識の特異性を確認するため重質量同位体標識による特異的蛋白、中質量同位体標識による非特異的蛋白のプロテオーム解析を行った。その結果、GART, GFPT1, VAG2, ARHGAP29, MAP1Bがcortactin近傍への特異的局在が示された。 RapG蛋白経路を活性化し細胞運動や上皮間葉転換を誘導する肝細胞増殖因子HGFによってリン酸化が亢進する蛋白を同定するプロテオーム解析を行った。HGF刺激した舌癌細胞H01N01のリン酸化ペプチドをTiO2で濃縮しLTQ Orbitrap Velos ETDを用いて質量分析を行った。その結果、920個のペプチドを同定し、906個がリン酸化ペプチドであり、精製方法の高い特異性が確認されたが、HGFによってリン酸化が亢進するペプチドの同定には至らなかった。 乳癌細胞の浸潤に抑制的に働くことが報告されているRAP1GAPについて肺腺癌161例で発現を免疫組織学的に検討した。肺腺癌161例中22例にRAP1GAPの発現が認められた。発現症例の方が非発現症例よりも浸潤径が小さい傾向が認められたが(20mm/27mm、p=0.07)、胸膜侵襲、脈管侵襲、リンパ節転移には有意差を認めず、肺腺癌の浸潤における意義は明らかでなかった。 巣状糸球体硬化症における発現亢進が報告されているRAP1GAPについて巣状糸球体硬化症12例、微小変化群22例の腎生検材料を用いて発現を免疫組織学的に検索した。Rap1GAPは正常糸球体において上皮細胞にのみ強い発現が認められ、巣状糸球体硬化症と微小変化群との間で発現強度に差は認められず既報告を支持する結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞骨格分子cortactinと協調して浸潤を制御する候補分子として昨年度にプロテオーム解析によって同定した蛋白についてcortactin近傍に局在する特異性が確認できたこと、リン酸化ペプチドのプロテオーム解析の特異性の確認、パラフィン切片からのペプチド抽出の実験条件が確立され、研究の進捗が得られた。一方、肺腺癌や糸球体疾患におけるRAP1GAPの臨床病理学的意義は明らかでなくRAPG蛋白経路の病態生理学的な意義を明らかにすることはできなかった。なくRAP分子の病態生理学的な意義を明らかにすることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はGART, GFPT1, VAG2, ARHGAP29, MAP1Bについて乳癌細胞内局在の検討、乳癌組織を用いた臨床病理学的な検索を行う。リン酸化ペプチドのプロテオーム解析については同定ペプチド数の増加、臨床検体(パラフィン包埋組織)を用いたリン酸化ペプチドの同定と臨床病理学的な検討を行う。リン酸化ペプチドの中でも少量でTiO2では濃縮の困難なリン酸化チロシンペプチドについて免疫沈降によるプロテオーム解析が可能か実験条件の検討を行っていく。
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