研究実績の概要 |
この研究課題では, 仮説:“老化細胞を除去すると, 原発性胆汁性胆管炎/肝硬変 (PBC)は治る” を検証し, PBCの新しい治療法の開発をめざした基礎的研究を行う。また, 現在明らかでない, 細胞老化の発生状況とPBCの病型やUDCA治療反応性などとの関連の検証もめざしている。 今年度は, ①培養胆管細胞を用いた検討で, 最近報告された新しい老化細胞除去薬(Na+/K+ATPase inhibitor:Digoxin,Ouabainなど)について, 胆管細胞での効果を検証した。結果として, Digoxin,Ouabainは胆管細胞においても, 部分的に老化細胞除去効果を示した。 ②老化細胞と正常細胞とのトランスクリプトーム比較解析により, いくつかの興味深い老化関連分子が検出された。この内, 老化細胞で発現が著明に亢進するinterferon (IFN)- induced protein with tetratricopeptide repeats 3 (IFIT3)について,さらに検討を進めた。1)PBC肝では, IFIT3発現は老化胆管細胞に一致しており, 胆管炎(CNSDC)を示す肝内小型胆管, 細胆管反応にIFIT3発現亢進を認めた。PBCの肝内小型胆管, 細胆管におけるIFIT3発現は, 対照肝と比較して有意に高率であった(p<0.01)。 2)培養胆管細胞に老化を誘導し, siRNAを用いてIFIT3発現をノックダウンすると, 細胞老化は有意に低下(p<0.01), 細胞増殖, アポトーシスは有意に亢進した(p<0.01)。老化胆管細胞におけるIFIT3発現亢進は, PBCの病態形成に関与する可能性が示唆された(論文投稿中)
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