研究実績の概要 |
卵巣未熟奇形腫は若年者の卵巣に発生する胚細胞性腫瘍に属する悪性腫瘍である。奇形腫成分である胎芽期の神経外胚葉成分が悪性度を規定し、転移再発をきたす。しかし未熟奇形腫の腫瘍発生に関わる遺伝子異常は明らかになっていない。一方で、この胎芽期の神経外胚葉成分への分化を主体とする小児脳腫瘍である髄芽腫や多層性ロゼットを形成する胎芽性腫瘍は、形態的には未熟奇形腫の神経外胚葉成分と同一である。またこれらの小児脳腫瘍のもつ遺伝子異常は詳細な情報がすでに明らかにされ、最新のWHO分類にも反映されている。このような背景から、我々は胎芽期神経外胚葉成分に分化する小児脳腫瘍ですでに明らかとなった遺伝子異常が、未熟奇形腫の神経外胚葉成分に認められるかどうかを明らかにしたいと考えた。本研究課題について当施設における臨床研究倫理委員会申請書類を作成し承認を受けた。研究に必要な試薬、消耗品を購入し、免疫染色、FISHの染色条件を調整した。19q13.42に遺伝子座があるC19MCの増幅をみるためのFISHプローブも購入した。未熟奇形腫immature teratoma症例は33登録あり、FISH/免疫染色が可能だった症例は30症例であった。結果は以下の通りである。LIN28染色:score 0(15例),1+(9例), 2+(4例), 3+(1例), 4+(1例) 、beta-catenin: membrane+/nucleus+(1例), membrane+/nucleus+(25例), membrane-/nucleus-(4例)、p53: 全30例wild type pattern、FISH:全30例19q13.42の増幅なし。
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