研究課題/領域番号 |
18K06995
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
端 秀子 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (90466532)
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研究分担者 |
中村 保宏 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (80396499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / グルココルチコイド受容体 / デキサメタゾン |
研究実績の概要 |
本年度は、ヒト前立腺癌組織の症例を前年度より追加し(計105例)、グルココルチコイド受容体(GR)の発現状況を免疫組織化学にて評価した。更に、エストロゲン合成酵素であるアロマターゼ、アンドロゲン合成酵素の5β-reductase 、17β-HSD5の発現状況も免疫組織化学にて評価した。また、ヒト前立腺癌培養細胞株DU145におけるデキサメタゾン(Dex)添加による細胞の遊走能への影響およびGRの発現を経時的に検討し、グルココルチコイドの応答遺伝子であるSGK1の発現においても経時的に検討した。 ヒト前立腺癌組織における免疫組織化学での検討では、正常上皮、癌細胞、周囲間質それぞれにGR発現が認められた。癌細胞でのGR発現を Gleason score、pT分類、年齢、PSAおよびその他免疫組織化学の発現状況とそれぞれと比較した。その結果、pT分類(癌の深達度)においてpT2はpT3と比較して有意にGRの発現が高いことが確認され、その他の免疫組織化学との相関は確認されなかった。DU145細胞の遊走能は、100nMのDex添加により有意な抑制が認められた。DU145のGR mRNA発現は、100nMのDex添加後3、6、24、48時間いずれにおいても有意に低下し、タンパクレベルでも同様に低下した。一方、SGK1のmRNA発現は3、6、24、48時間いずれにおいても有意に上昇した。 これらの結果から、ヒト前立腺癌組織では癌の深達度とGRの発現状況が逆相関することから、GRの発現は癌の進展を抑制している可能性が示唆された。また、グルココルチコイドは、前立腺癌細胞の増殖や遊走に影響を及ぼしており、またグルココルチコイドの応答遺伝子やGR発現に影響を生じることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト前立腺癌組織の免疫組織化学的検討を終えることができ、GR発現との相関を検討することができた。また、培養細胞を用いた検討は概ね順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞のDex添加による経時的な影響をPCR Arrayにより解析し検討を行う。必要に応じてバリデーション、タンパク発現解析を行う。また、関連するサイトカインアレイによる検討も行う。グルココルチコイドと前立腺癌の病態との関連を更に検討し、ヒト前立腺癌組織と培養細胞実験における比較・検討を行い、総合評価を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
PCR Array(QIAGEN)解析およびサイトカインアレイ(RayBio)が出来なかった。その分を見込んでいた金額を次年度に繰り越す。培養細胞のPCR Array解析、サイトカインアレイ解析を実施する。
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