研究課題
グルココルチコイドは一般的に癌抑制と考えられているが、癌の種類によってはグルココルチコイド受容体(GR)の発現は予後が悪いという報告がなされている。GRは癌の増殖や進展に関与している可能性が示唆されており、またグルココルチコイドはGRおよびGR関連遺伝子の発現に影響を及ぼしていることが考えられているが、前立腺癌でのこれらの知見は少ない。本年度は、PCR Array(QIAGEN)を用いた検討で、グルココルチコイド関連の発現上昇が大きい上位4遺伝子(PER1、ANGPTL4、TSC22D3、DUSP1)と、発現低下していたIL-6、GRの計6遺伝子についてqRT-PCRにて検討した。また、ヒト前立腺癌培養細胞株DU145におけるデキサメタゾン(Dex)およびDexのアンタゴニストであるミフェプリストン(RU486)添加による細胞増殖、GR関連遺伝子の発現変化への影響を検討した。DU145にDexを1nM、10nM、100nM、1μM添加3時間処理後qRT-PCRにてmRNA発現を確認したところ、Dex添加10nM以上で有意にPER1、ANGPTL4、TSC22D3、DUSP1は発現上昇し、IL-6、GRは発現低下が確認された。これらはDex添加100nMでのPCR Arrayの結果と一致していた。また、細胞増殖試験はDU145にDexを1nM、10nM、100nM、1μMとRU486を10μM、25μM、50μM添加で検討した。RU486濃度10μMでは細胞増殖の抑制がされず、25μMでは細胞増殖が抑制され、50μMでは致死的濃度であった。そこで、Dex各濃度とRU486を25μM添加で同様に3時間処理後qRT-PCRにてmRNA発現を確認したところ、上記6遺伝子に関しては発現変化が確認されなかった為、Dexが多くの遺伝子発現変化に影響を及ぼしていることが再確認された。これらの結果から、グルココルチコイドは、前立腺癌細胞の増殖や浸潤に影響を及ぼしているほか、グルココルチコイド関連遺伝子やGR発現に影響を及ぼしていることが考えられた。
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Med Mol Morphol.
巻: 55(4) ページ: 283-291
10.1007/ s00795-022-00332-x