研究課題/領域番号 |
18K06996
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
矢澤 卓也 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50251054)
|
研究分担者 |
柏木 維人 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50722451)
矢澤 華子 (佐藤) 獨協医科大学, 医学部, 講師 (60438132)
石井 順 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80749599)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 神経内分泌肺癌 / RB1遺伝子ファミリー / 増殖 / 分化 |
研究実績の概要 |
神経内分泌肺癌における高率なRB1遺伝子異常の存在は周知の事実であるが、近年のゲノム医学や遺伝子操作技術の進歩は、RB1遺伝子異常に加え非神経内分泌肺癌と同様の遺伝子異常を有する神経内分泌肺癌の存在や、RB1遺伝子ファミリーの異常を伴う非神経内分泌細胞からも神経内分泌肺癌が発生する事実を我々に知らしめることとなり、神経内分泌肺癌の発生起源を神経上皮体に求めていた既成概念を根底から揺るがしている。我々は神経特異的POU転写因子が非神経内分泌肺癌細胞を神経内分泌肺癌細胞へと形質転換させることを明らかにしたが、その現象はRB1遺伝子ファミリーの機能不全を伴う未分化な肺癌細胞に限定的であった。これらの知見は、神経内分泌肺癌の発生や非神経内分泌肺癌細胞から神経内分泌肺癌細胞への形質転換にはRB1遺伝子ファミリーの機能不全に伴う未知なる分子基盤が必要であることを示唆している。これまでに非神経内分泌肺癌細胞のRB1遺伝子ファミリーであるRB1あるいはP130の遺伝子編集を行うことにより惹起される増殖能および遺伝子発現変化について検討し、RB1遺伝子ノックアウト癌細胞株、P130遺伝子ノックアウト癌細胞株、RB1遺伝子/P130遺伝子ダブルノックアウト癌細胞株いずれにおいてもその増殖能や細胞周期に有意な変化は現れないこと、RB1遺伝子あるいは/およびP130遺伝子をノックアウトした癌細胞では上皮間葉転換に関与する遺伝子発現が増加することが明らかになった。本年度は上記のRB1遺伝子ノックアウト癌細胞株、P130遺伝子ノックアウト癌細胞株、RB1遺伝子/P130遺伝子ダブルノックアウト癌細胞株に対し、3型POU遺伝子、4型POU遺伝子を導入し、形質転換の有無について検討した。その結果、多少の神経内分泌マーカー分子の発現更新は見られるものの、著しい形質転換現象は惹起されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の肺癌培養細胞株においてRB1遺伝子ファミリーのノックアウト細胞株の樹立に成功し、当該遺伝子編集に伴う増殖分化への影響を検索でき、また3/4型POU遺伝子導入による形質転換実験を行えているため。
|
今後の研究の推進方策 |
おそらく非神経内分泌肺癌から神経内分泌肺癌への形質転換にはRB1ファミリー遺伝子に加え、何らかの遺伝子異常が必要なのではないかと思われる。これまでの実験動物を用いた神経内分泌肺癌作成モデルでは、RB1ファミリー遺伝子異常とともにTP53遺伝子異常が神経内分泌肺癌の発生に重要であることが示唆されていることから、今後はTP53遺伝子編集を加え、神経内分泌肺癌細胞への形質転換研究を推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬を購入予定であったが、本年度の残額6701円を上回っていたため、次年度に継続して行う研究の消耗品費の一部として使用する予定である。
|