研究実績の概要 |
最終年度に以下の検討を行った。 1.医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患を対象に、FFPE検体を用いIon AmpliSeq Comprehensive Cancer Panelにより網羅的な遺伝子変異解析を行った。DLBCL型12例、polymorphic型3例で有意な結果が得られ、複数例で異常を認めた遺伝子はKMT2D, CDKN2A, TET2, CREBBP, MYD88, TP53, SGK1, MYC, ARID2, POT1であった。DLBCLの網羅的遺伝子変異解析についての既報告(Cell 2017:171:481-494)の結果と比較して、異常の頻度に有意差のある遺伝子は見出せなかった。 2.FFPE検体を用いInfinium CoreExome-24 kitによるCNV解析を行った。MTX関連リンパ増殖性疾患のCNV解析の既報告(Am J Surg Pathol 2018:42:936-950)で有意な異常があるとされる領域に焦点を絞って解析を行った。MTX-LPDに特徴的とされる3q11.2-3q29, 3q12.2-3q13.11, 12q14.1-12q15の増幅は8例中2例、9q12-9q34.3が1例で確認されたのみであった。
研究期間を通して、医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患の臨床病理学的特徴として、その頻度が近年増加傾向にあること、DLBCL型、polymorphic型及びホジキンリンパ腫型が主な組織型で、免疫抑制薬の中止で寛解例に至る例がしばしばあり、特にpolymorphic型とEBV陽性例でその傾向が顕著であることを確認した。網羅的遺伝子変異解析の結果からは、通常型DLBCLとの比較で医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患、あるいはその予後良好群に特徴的・特異的な異常は見出せなかった。
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