研究課題/領域番号 |
18K07007
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
桑田 健 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (00327321)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胃癌 / ゼノグラフト / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
胃癌症例250例を登録し、新規ヒト由来ゼノグラフト(PDX)および細胞株の樹立を行ってきた。昨年度(本研究2年次)に樹立・観察期間を完了し、PDX・細胞株の樹立状況を固定した。結果として、本研究開始時より7例でのPDX・細胞株が追加され、全体としてして47例からPDXもしくは細胞株の樹立ができた。このうち21例においてPDXおよび細胞株の両者が、また15例および11例について、それぞれPDXおよび細胞株が樹立された。分化型胃癌は未分化型に比してより高い頻度でPDXが樹立でき、また分化度の点で原発巣とPDXでの所見は一致相関していた。一方、細胞株においては原発巣・PDXに比べ分化度が低下する傾向が見られた。その他、PDX細胞株樹立にかかわる臨床病理学的因子としてリンパ節転移が同定された。樹立過程ならびに関連臨床病理学的因子に関する検討結果を英語論文として専門誌に発表した。PDXおよび細胞株において認められる遺伝子変異に関して、次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル解析を、追加樹立された7例を加えたすべてのPDXおよび細胞株に対し実施完了し、その解析結果を取得した。また手術症例については、胃癌原発巣の凍結組織もしくは病理組織標本に対しても同様のNGS解析を行った。さらにがん組織特異的に生じている体細胞変異を効率的に同定するため、手術症例で利用可能なものについては同様に正常部組織を用いた解析を実施し、腫瘍部で認められる変異プロファイルとの差し引きを行った。あわせて、すべての手術症例について、原発巣における病理組織標本を用いた免疫組織学的検討を完了した。プロファイルからドライバーと考えられる遺伝子変異候補を1つ同定し、それに対する分子標的治療薬の投与により同変異を有する細胞株に増殖抑制がかかることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌症例より新規に樹立したヒト患者由来ゼノグラフト(PDX)および細胞株、ならびに利用可能な原発巣についての遺伝子解析と変異プロファイル野取得を完了した。このプロファイルの比較から原発巣より恒常的に認められるドライバー変異をすでに1つ同定できている。最終年度にさらにどらーばー変異を同定し、またPDXおよび細胞株を用いて該当する分子標的治療薬に対する感受性試験を遂行することで本研究の目的を達成できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
正常部組織の遺伝子SNPプロファイルを差し引きしたのちの原発巣、ヒト患者由来ゼノグラフト(PDX)および細胞株の遺伝子変異プロファイルを比較することで、胃がん発生の過程で特異的に発生した遺伝子変異のみを抽出し、原発巣からPDX・細胞株にまで恒常的に認められるドライバー変異候補を抽出する。同定されるドライバー変異候補に対し特異的に作用すると考えられる分子標的治療薬を用い、細胞株およびゼノグラフトモデルを用いた薬剤感受性試験を実施し、胃癌の増殖を抑制できる薬剤が作用する遺伝子変異を胃癌における真のドライバー変異として同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(2年度)までに追加で樹立されたPDXおよび細胞株が発生したため、それらに対する遺伝子変異解析を実施した。また樹立に関して得られた知見を論文化するための作業を行った。PDXおよび細胞株に対する分子標的治療薬に対する感受性試験など生物学的解析については、すべての遺伝子解析結果が揃ってから実施することとしたため、予定している感受性試験を最終年度に実施することとなり、そのための費用が次年度(最終年度)に使用予定となった。
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