研究実績の概要 |
研究実施論文化に向け、3年度までに実施した遺伝子プロファイリングデータの統合解析によるドライバー遺伝子の同定および樹立細胞株を用いた抗がん剤に対する薬剤感受性試験を実施した。 原発巣・PDX・細胞株のいずれかで同定された遺伝子変化について、コピー数異常(CNV)は7遺伝子、単塩基置換(SNV)は47遺伝子で認められた。SNVをしめす遺伝子の多くはがん抑制遺伝子で、活性化型変異をしめすがん遺伝子は12遺伝子のみであった。PDX・細胞株の両者が樹立され、原発巣を含めたトリオ解析が可能となった20例について、CNVは5遺伝子で認められ、うち4遺伝子は原発巣・PDX・細胞株のすべてで遺伝子増幅が同定され、ドライバー遺伝子の可能性が考えられた。このうち、複数例で同定された遺伝子はERBB2のみであった。SNVについて、複数例かつ原発巣・PDX・細胞株のすべてで変異が認められたがん遺伝子は4遺伝子で、このなかにはERBB, KRAS, PIK3CAが含まれた。がん抑制遺伝子については12遺伝子で、TP53, ARID1A, APC, ARID2, PTENなどが含まれていた。一方、原発巣には存在せず、PDXおよび/もしくは細胞株においてのみで認められたものとして、がん遺伝子はBRAF, CTNNB1, AKT2、がん抑制遺伝子としてはRB1, STK11, MSH2などがあり、これらはパッセンジャー変異と考えられた。 これら情報を元に、細胞株について胃癌に対し用いられる殺細胞性抗がん剤癌受精との比較を行ったが、遺伝子プロファイリングおよび分子プロファイリングとの明らかな相関は確認できなかった。 上記内容について英文学術誌への投稿に向けた論文を作成中である。
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