研究課題/領域番号 |
18K07008
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
平岡 伸介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (40276217)
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研究分担者 |
中嶋 幸生 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (80785775)
石川 義典 (猪野義典) 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90291137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 3次リンパ装置 / 膵がん / 微小環境 / 神経束 |
研究実績の概要 |
3次リンパ装置は膵がん周囲に高頻度に形成される一方で、膵がん組織内に形成されるものは少数症例であるがハザード比の高い予後良好な因子になる。3次リンパ装置形成は活動性抗腫瘍免疫と深く関連し、また膵組織内の3次リンパ装置はその90%以上が神経と動静脈の走行する膵小葉間結合識に限って形成されていた。3次リンパ装置形成には、適当な免疫環境のみならず、基盤となる組織構築が必要と考えられる。本研究ではがん組織の3次リンパ装置形成・維持機序の解明とその制御の理解を目指し、これを通じてがん免疫微小環境の理解を深めることを目的とする。前年度に膵がん組織に誘導される2タイプ(小葉間型と粘膜型)の3次リンパ装置における形成・維持機序の比較解析を実施した結果、粘膜型は小葉間型に比して神経系細胞に関連する遺伝子X発現の有意に高いことがわかった。そこで本年度は膵がんと神経の関係について317症例の膵がん外科切除検体を用いて検討を行った。膵がん組織内に3次リンパ装置存在症例は有意に多くの神経束が存在していた。膵がん組織・慢性膵炎組織内で個々の神経束は過形成を呈する一方で、膵がん組織内の神経束密度の減少が目立ち、さらに神経束密度の減少(P = 0.04; HR = 1.496; 95% CI 1.018-2.199)はがん細胞神経浸潤の割合(P = 0.064; HR = 1.439; 95% CI .980-2.114)と共に独立した予後不良因子であることがわかった。神経束の減少は腫瘍中心部で顕著、腫瘍辺縁部で緩徐の傾向にあり、神経束の減少の原因とがん浸潤能との関係が示唆されると共に、3次リンパ装置形成・維持機序との関連性も示唆された。そこで、神経束密度に関連する微小環境因子についてさらに検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵がん組織に誘導される2タイプの3次リンパ装置における形成・維持機序の比較解析のため得られた神経関連因子について、本年度はさらにがん組織内の神経束との関係性を検討して理解を深める準備が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的達成のため、引き続き遺伝子Xについて発現様式、3次リンパ装置における役割・機能を解析する。また3次リンパ装置形成部位を決定する重要な要因として特定ケモカイン提示に働くグリコサミノグリカン構造とその制御について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも試薬等発注タイミングがずれたために残額が生じたが、次年度に当該年度使用残額と次年度使用額とを合わせて使用予定である
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