研究課題
3次リンパ装置は膵がん周囲に高頻度に形成される一方、がん組織内に形成される症例は少数であるがハザード比の高い予後因子になる。以前の検討から3次リンパ装置形成には、適当な免疫環境のみならず基盤となる組織構築が必要と考えられる。本研究ではがん組織の3次リンパ装置形成・維持機序の解明とその制御の理解を目指し、これを通じてがん免疫微小環境の理解を深めることを目指す。膵がん組織に誘導される2タイプの3次リンパ装置における形成・維持機序の比較解析のため、小葉間型と粘膜型、各3次リンパ装置を膵がん新鮮凍結組織からmicrodissection後、網羅的遺伝子発現解析を実施した。粘膜型は小葉間型に比して神経系細胞に関連する遺伝子X発現の有意に高いことがわかった。次に膵がんと神経の関係について317症例の膵がん外科切除検体を用いて検討を行った。膵がん組織内に3次リンパ装置存在症例は有意に多くの神経束が存在していた。膵がん組織・慢性膵炎組織内で個々の神経束は過形成を呈する一方で、膵がん組織内の神経束密度の減少が目立ち、さらに神経束密度の減少はがん細胞神経浸潤の割合と共に独立した予後不良因子であった。神経束の減少は腫瘍中心部で顕著、腫瘍辺縁部で緩徐の傾向にあり、神経束の減少の原因とがん浸潤能との関係が示唆されると共に、3次リンパ装置形成・維持機序との関連性も示唆された。3次リンパ装置形成と膵組織構築との関係を更に検討するため、3次リンパ装置形成を伴う非腫瘍性慢性炎症組織について解析した。慢性炎症巣において形成される3次リンパ装置は膵がん同様に神経と動静脈の走行する膵小葉間結合識に形成されるものに加えて、炎症の中心が膵管である炎症では膵管部にも3次リンパ装置が形成されることがわかった。今後さらに膵がん組織の3次リンパ装置形成・維持機序の解明とその制御の理解を深めるため検討を続ける。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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