研究課題/領域番号 |
18K07011
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉田 誠 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (70637553)
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研究分担者 |
前田 大地 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (30585500)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / 拡張型心筋症 / 遺伝子解析 / 心不全バイオマーカー / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
病理解剖例から非心不全、心不全、拡張型心筋症の心臓凍結標本それぞれ4症例ずつ選択し、RNA抽出を行った。心筋組織から得られるRNA量は特に少なく、抽出には試行錯誤を繰り返すこととなった。結果的に心筋検体を多めに採取することでRNA量の問題は乗り越えることができた。抽出RNAを用いて網羅的RNAシークエンスを行った結果、拡張型心筋症で200個程度の遺伝子の発現変動が認められ、うち20個程度で発現上昇し180個で発現低下を認めた。心不全群では7000個程度の遺伝子発現変動が認められた。発現上昇および低下ともに約半々程度であるが、それでも発現上昇だけでも3000以上に及ぶ。ひるがえって、拡張型心筋症における心筋細胞内での遺伝子発現は極端に少ないことが判明した。特に今回解析した症例は死亡例であり、拡張型心筋症の末期状態を反映している。このことから拡張型心筋症の末期では心筋細胞内での細胞活性が極度に低下しており、通常の代謝活性も含めたタンパクのターンオーバーが極端に抑制されている状態であると推測される。心不全症例では炎症関連、代謝関連、タンパク合成関連、癌抑制遺伝子などの各種遺伝子が発現しており、心不全死においても多様なバックグラウンドが示唆された。数が7000に及ぶため、各遺伝子の解析はいまだ終了していない。当初の目的である心筋収縮が傷害されている状態を反映する遺伝子発現を見つけるためには純粋な心不全環境での心筋細胞の解析が必要と考えられた。現在動物実験を並行して開始しており、心不全ウサギモデルを用いた心筋の遺伝子解析を行い、人間の心筋細胞の遺伝子と比較解析を行う予定である。この比較解析により、7000個の中からさらに心不全と深く相関する遺伝子群が絞り込まれ、解釈が容易になると予測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心不全の遺伝子解析で発現の変動が認められた遺伝子群が7000個におよび、解析、解釈に時間を要している。TP53などの癌抑制遺伝子も含まれており、心不全における侵襲縮低下と真に関連するのか、あるいは症例の多様な背景にともなう偶然なのかの判断が難しい。以上の結果から人間の解剖症例の結果のみから遺伝子発現の解釈を得るのは困難と考えた。当初予定を大幅に変更することになるが、動物実験の遺伝子解析を行い、純粋な環境での心筋細胞の遺伝子発現変動の結果を得た上で、人間の心筋細胞との比較解析を行うこととした。大きく回り道をすることになるが、7000個の遺伝子の中から意義のある遺伝子発現を見いだすためには必要な実験と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗が遅れている理由にも記載したが、動物実験を行って遺伝子発現の結果の比較解析を行うこととした。これによって今年度は動物実験とその心筋細胞の遺伝子発現解析を行う。今年と後半はその結果から人間の遺伝子発現解析の結果との比較解析によって心筋収縮障害に強く相関する遺伝子群を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現に係る費用が見込みより安く行う事ができたことと、予定していた学会発表が新型コロナ騒動のためWeb開催となり旅費を使用しなかったため余剰が生じた。余剰金は今年度出稿予定の論文の英文校正および投稿費用として使用する予定です。出稿予定論文は本研究の主体である心筋介在板の形態について研究したもので、本研究とも深い関連性を有する。論文は本科研費からの資金提供による研究であることを明記する。
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