研究課題
近年、癌を対象とした遺伝子発現や遺伝子異常に関する網羅的解析、所謂オミックス研究が盛んに行われてきたのに対し、心疾患の領域では網羅的遺伝子解析による知見の蓄積が非常に乏しい。その理由として、生前に心筋組織が採取される機会が、心筋生検や心臓移植などのみで、症例が限られることが挙げられる。本研究では、左室収縮能低下を呈した剖検心を用いた網羅的遺伝子発現解析を中心に研究を行い、左室収縮能を反映するバイオマーカーの同定を目的として行った。Controlを含む全12例の剖検心でRNA-seq解析を行った。心不全群とコントロール群との比較から発現が亢進もしくは低下している遺伝子が全部で6826個確認された。その中にはANPやCRPといった心不全で見られるタンパクをコードする遺伝子が確認された。この結果から選択した剖検心が心不全症例として矛盾しないものと考えられた。その中からいくつかの遺伝子をピックアップして、RT-PCRで検証を行った。現在、その中で我々が注目している遺伝子がNOX1である。活性酸素種(ROS)は心血管系の疾患のみならず種々の疾患の発症・進展に関与する一方,生体の恒常性維持においても重要な役割を果たすことが知られている。そのROSを産生する酵素の1つであるNADPHオキシダーゼは細胞質のNADPHから受け取った電子により酸素分子を還元してスーパーオキサイドを生成する。NOXはこのNADPHオキシダーゼの触媒サブユニットであり、NOX1-5, DUOX1, 2の7つのサブタイプが存在することが知られている。本解析からNOX1, DUOX1, 2の3つが発現していることが分かった。この中でも特にNOX1はアンジオテンシンIIによる血圧上昇,大動脈乖離,アテローム性動脈硬化症および心虚血再灌流障害等種々の心血管系疾患における増悪因子としての役割が明らとなっている。現在はNOX1を中心に遺伝子発現と、心不全の指標となる左室駆出率との相関を検討している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Cardiovascular Pathology
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