研究課題/領域番号 |
18K07015
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
狛 雄一朗 神戸大学, 医学研究科, 講師 (40714647)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / がん関連線維芽細胞 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
食道扁平上皮癌の発癌初期段階におけるがん関連線維芽細胞(cancer-associated fibrobast, CAF)の役割を検討するために、ヒト食道正常扁平上皮細胞株(Het-1A)と線維芽細胞との間接共培養系を確立した。線維芽細胞として、CAFの起源と考えられているヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)とヒト食道由来線維芽細胞(esophageal fibroblast, fibroblast)を用いた。 前年度に間接共培養の期間の最適な条件を検討し、Het-1Aと4日間の間接共培養を施行したMSCとfibroblastのいずれにおいてもCAFマーカーであるfibroblast activation protein (FAP)とpodoplaninの発現が充分に亢進することを確認できた。以上から間接共培養の期間は4日間に固定した。 「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」は「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」と比べて増殖能と運動能が亢進し、細胞内シグナル伝達においてはSTAT3のリン酸化レベルが亢進していた。さらには「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」と「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」との間でサイトカインアレイ解析やcDNAマイクロアレイ解析を施行し、後者において分泌量や発現量の亢進する分子を網羅的に抽出した。これらの分子の発現量の変化を定量的PCR、ELISA、western blotによって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」と「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」から培養上清を回収し、サイトカインアレイ解析を施行したところIGFBP2とIGFBP3のスポットが亢進していた。この結果を定量的PCRとELISAで検討し、IGFBP2はmRNAおよび分泌タンパク質のいずれにおいても発現・分泌が有意に亢進していることを見出した。 「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」と「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」からmRNAを回収し、cDNAマイクロアレイ解析を施行した。MSCの実験系とfibroblastの実験系に共通して発現量が亢進している遺伝子に着目し、定量的PCRではCCL2、DHRS3、ANXA10、latexin、keratin 18、PAI2のmRNAレベルでの発現の亢進を確認できた。さらにはwestern blotあるいはELISAではCCL2、ANXA10、PAI2のタンパク質レベルでの発現・分泌の亢進を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
Het-1Aと間接共培養したMSCあるいはfibroblastでは、CAFマーカーの発現亢進に加えて増殖能・運動能の亢進ならびにSTAT3の活性化を確認できた。また、この時に細胞外への分泌が亢進する分子としてIGFBP2、CCL2、PAI2を、細胞内で発現の亢進する分子としてANXA10を見出した。 分泌の亢進する分子(IGFBP2、CCL2、PAI2)についてはこれらのリコンビナントタンパク質をMSCあるいはfibroblastに添加した際の増殖能や運動能への影響を検討する。また、発現の亢進する分子(ANXA10)についてはsiRNAによってMSCあるいはfibroblastで発現を抑制した際の増殖能や運動能への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に網羅的解析によって見出した分子の機能解析をする予定であったが、候補分子が複数あり、解析分子を絞り込む段階で時間を要したため、機能解析を実施できなかった。今年度に個々の分子の機能解析を実施する予定である。
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