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2018 年度 実施状況報告書

遺伝子改変オルガノイドを用いたドライバー変異による正常胃粘膜の初期変化の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K07016
研究機関広島大学

研究代表者

大上 直秀  広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (60346484)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード胃癌 / 癌幹細胞 / スフェロイド / QPRT
研究実績の概要

進行胃癌のうち低分化腺癌は未だ予後不良の疾患であり、新規診断マーカー・治療標的の同定が急務となっている。本研究の目的は、RHOA、CDH1の変異により特異的に発現が誘導される遺伝子を同定し、胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。
本年度は胃癌細胞株を材料にスフェロイドを作成し、胃癌の癌幹細胞関連遺伝子の同定を行った。スフェロイドは幹細胞を含むことが知られており、幹細胞の研究にしばしば用いられる。細胞が接着した状態と比較し、スフェロイドを形成した状態では、QPRT、CST2、ANKRD45遺伝子が特に発現が上昇していた。胃癌組織を材料に定量的RT-PCRで遺伝子発現を測定した結果、QPRTは80%、CST2は40%、ANKRD45は20%の胃癌組織で高発現していた。
QPRT遺伝子は、quinolinate phosphoribosyltransferaseをコードする遺伝子であり、トリプトファンからのNADの合成に関わる分子である。癌における文献を検索すると、甲状腺濾胞腺腫と癌との鑑別に有効であったとの報告があるが、消化管癌を含むその他の悪性腫瘍における報告は認められない。そこで胃癌組織を材料にQPRTの発現を免疫染色で解析したところ、138例中47例(34%)の症例で陽性像を認めた。臨床病理学的遺伝子との関連を解析した結果、QPRT陽性例は有意に深達度が深く、遠隔転移例が多く、またステージも進行していた。予後との関連を解析したが予後との関連はなかった。
以上の結果から、QPRT遺伝子は胃癌の癌幹細胞に重要な役割を担っている可能性があり、今後は胃癌の癌幹細胞における機能解析を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は胃癌細胞株を材料にスフェロイドを作成し、胃癌の癌幹細胞関連遺伝子の同定を行った。細胞が接着した状態と比較し、スフェロイドを形成した状態では、QPRT、CST2、ANKRD45遺伝子が特に発現が上昇していることを見出した。これらの3個の遺伝子以外にも多数の癌幹細胞に関連する遺伝子を同定している。本研究の目的は胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。癌幹細胞は癌細胞のもととなる細胞と考えられており、これらの遺伝子は癌の新規治診断マーカーとして有用である。さらに機能解析の結果、癌幹細胞の維持に重要な役割を有している場合、治療標的となる可能性がある。QPRTの機能解析は現在進行中であるが、癌幹細胞に関連していれば治療標的となるものであり、現在までの進歩状況としては順調といえる。

今後の研究の推進方策

今後はQPRTの機能解析を進めていくとともに、CST2、ANKRD45遺伝子の発現解析を行う。発現が胃癌において上昇していた場合、さらに機能解析を行う。
機能解析の方法として、胃癌細胞株を材料にRNAiを用いてノックダウンし、細胞増殖能をMTTアッセイで、浸潤能をInvasionアッセイを用いて解析する。またスフェロイド形成能をスフェロイドフォーメーションアッセイで解析する。さらに外科的に切除された胃癌組織を材料に免疫染色で、発現・局在を解析する。発現と臨床病理学的因子、予後との関連を明らかにする。
これらに加え、外科的に切除された胃癌の非癌部胃粘膜を材料にオルガノイドを作成する。非癌部胃粘膜のオルガノイドを材料に、上記遺伝子の変異をCRISPER-Cas9システムを用いて導入し、GeneChipを用いて網羅的遺伝子発現解析を行う。胃癌細胞株のデータと合わせて変異株で発現が上昇している遺伝子のリストを作成し、文献検索を行い細胞表面に局在する蛋白質をコードする遺伝子を抽出する。さらに変異株において発現が上昇していた細胞表面蛋白質の免疫染色を行い、変異株のオルガノイドにおいてどのような細胞が染色されてくるのかを解析し、HE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)上で形態学的特徴を明らかにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Clinicopathological significance of claspin overexpression and its association with spheroid formation in gastric cancer2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Go、Sentani Kazuhiro、Hattori Takuya、Yamamoto Yuji、Imai Takeharu、Sakamoto Naoya、Kuraoka Kazuya、Oue Naohide、Sasaki Naomi、Taniyama Kiyomi、Yasui Wataru
    • 雑誌名

      Human Pathology

      巻: 84 ページ: 8~17

    • DOI

      10.1016/j.humpath.2018.09.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Signal regulatory protein alpha blockade potentiates tumoricidal effects of macrophages on gastroenterological neoplastic cells in syngeneic immunocompetent mice2018

    • 著者名/発表者名
      Abe Tomoyuki、Tanaka Yuka、Piao Jinlian、Tanimine Naoki、Oue Naohide、Hinoi Takao、Garcia Noel Verjan、Miyasaka Masayuki、Matozaki Takashi、Yasui Wataru、Ohdan Hideki
    • 雑誌名

      Annals of Gastroenterological Surgery

      巻: 2 ページ: 451~462

    • DOI

      10.1002/ags3.12205

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Uc.416+A promotes epithelial-to-mesenchymal transition through miR-153 in renal cell carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      Sekino Yohei、Sakamoto Naoya、Goto Keisuke、Honma Ririno、Shigematsu Yoshinori、Quoc Thang Pham、Sentani Kazuhiro、Oue Naohide、Teishima Jun、Kawakami Fumi、Karam Jose A、Sircar Kanishka、Matsubara Akio、Yasui Wataru
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: 18 ページ: 952

    • DOI

      10.1186/s12885-018-4863-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TDO2 Overexpression Is Associated with Cancer Stem Cells and Poor Prognosis in Esophageal Squamous Cell Carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      Pham Quoc Thang、Oue Naohide、Sekino Yohei、Yamamoto Yuji、Shigematsu Yoshinori、Sakamoto Naoya、Sentani Kazuhiro、Uraoka Naohiro、Yasui Wataru
    • 雑誌名

      Oncology

      巻: 95 ページ: 297~308

    • DOI

      10.1159/000490725

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Silencing of Discoidin Domain Receptor-1 (DDR1) Concurrently Inhibits Multiple Steps of Metastasis Cascade in Gastric Cancer2018

    • 著者名/発表者名
      Yuge Ryo、Kitadai Yasuhiko、Takigawa Hidehiko、Naito Toshikatsu、Oue Naohide、Yasui Wataru、Tanaka Shinji、Chayama Kazuaki
    • 雑誌名

      Translational Oncology

      巻: 11 ページ: 575~584

    • DOI

      10.1016/j.tranon.2018.02.003

    • 査読あり
  • [学会発表] Precision medicineを目指したオルガノイドモデルによる胃がんの薬剤効果判定2018

    • 著者名/発表者名
      大上直秀、坂本直也、本間りりの、仙谷和弘、安井 弥
    • 学会等名
      第107回日本病理学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] トランスクリプトームによる胃がんの発生・進展の理解2018

    • 著者名/発表者名
      大上直秀、山本悠司、今井健晴、國安弘基、仙谷和弘、坂本直也、大段秀樹、吉田和弘、安井 弥
    • 学会等名
      第29回日本消化器癌発生学会総会
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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