研究課題
進行胃癌のうち低分化腺癌は未だに予後不良の疾患であり、新規診断マーカー・治療標的の同定が急務となっている。本研究の目的は、RHOA、CDH1の変異により特異的に発現が誘導される遺伝子を同定し、胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。癌幹細胞の特徴の一つに薬剤耐性が知られている。化学療法を行っても薬剤抵抗性のある癌幹細胞は生存し、再発の原因となることが想定されている。本年度は胃癌における薬剤耐性について解析をおこなった。Endothelial cell-specific molecule-1 (ESM-1)遺伝子は多様な機能を有する遺伝子である。予後予測の困難であるStage II/IIIの外科的に切除された胃癌253例を材料にEMS-1の発現をリアルタイムRT-PCR(qRT-PCR)で測定した。その結果、S-1をベースとした術後補助化学療法を施行された症例では、高EMS-1症例は有意に予後不良であったのに対し、術後補助化学療法を施行されなかった症例では、EMS-1の発現と予後との間に統計的な関連は認めなかった。Glioma-associated oncogene 1(GLI1)は多様な機能を有する転写因子である。様々な癌においてGLI1の異常が報告されているが、胃癌の薬剤耐性との関連については解析されていない。そこで外科的に切除されたStage II/IIIの胃癌で、S1ベースの補助化学療法が施行された142例の胃癌を材料にGLI1の発現をqRT-PCRで解析した。その結果、高GLI症例は低GLI症例と比較し有意に予後不良であった。以上から、ESM-1およびGLI1は胃癌幹細胞の薬剤耐性に重要な役割を担っているものと考えられた。
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