研究課題/領域番号 |
18K07020
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
大橋 健一 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40231203)
|
研究分担者 |
奥寺 康司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326027)
立石 陽子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20644438)
梅田 茂明 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30644439)
松村 舞依 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50812997)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 病理学 / 肺がん / 腺がん / 間質性肺炎 |
研究実績の概要 |
肺腺癌の凍結検体から組織亜型領域別にレーザーマイクロダイセクションで切り分けRNAを抽出し、マイクロアレイを用いたmRNA網羅的発現解析を行った 。微小乳頭状組織亜型において共通して発現上昇あるいは低下していた分子を選抜し、定量的RT-PCRによって、これらの発現変動を検証した。さらに、微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌37例、微小乳頭状組織亜型成分を伴わないEGFR 肺腺癌44例、EGFR 陰性の肺腺癌 33例の凍結検体からRNAを抽出し、定量的RT-PCRを行った。 微小乳頭状組織亜型とそれ以外の組織亜型との間に共通して3倍以上の変動がみられたものは4個(発現上昇2個(DYRK2, KIAA1324)、発現低下2個(COL4A3, ITGBL1))であった。定量的RT-PCRで元症例における発現の検証を行ったが、いずれもマイクロアレイで得られた結果と同等の結果であった。微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌19例、微小乳頭状組織亜型成分を伴わないEGFR肺腺癌17例、EGFR陰性の肺腺癌(微小乳頭状組織亜型成分は問わない)18例について、施行した定量RT-PCRではDYRK2については微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌での発現量が、微小乳頭状組織亜型成分を伴わないEGFR 肺腺癌に比べて高い傾向がみられた。微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌、微小乳頭状組織亜型成分を伴わないEGFR 肺腺癌について、DYRK2とITGBL1に対する特異的抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。抗DYRK2抗体を用いた免役染色では、微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌において強く染色される部分がみられた。また、抗ITGBL1抗体では、逆に微小乳頭状組織亜型成分を伴うEGFR 肺腺癌において染色が減弱している部分がみられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り研究は順調に進んでいる。間質性肺炎における遺伝子異常の検討については2019年度においてはデジタルPCR法による解析が進んだが、さらに対象症例を適切に設定して2020年度には発表できるデータが得られ、論文にまとめられると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
アレイの検索で見つかった発現亢進が認められた遺伝子については、発現亢進のメカニズムについて検討したい。遺伝子増幅の有無、体細胞遺伝子変異、遺伝子発現を調節するマイクロRNAの発現についても網羅的に検索を行い、バイオインフォマティクスの技術を応用して予後不良な微小乳頭亜型の発生に関わる遺伝子異常についての全容を明らかにしたい。 間質性肺炎に合併する肺腺がんの発生メカニズムの解析については、現在デジタルPCRの技術を応用して背景の蜂窩肺、化生上皮部分における低頻度の遺伝子変異についてをさらに検討する。2020年度では検討症例、検索遺伝子種類を増やし、適切な対象症例を設定してデータの解析を進め、論文にまとめていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりもアレイによる網羅的な遺伝子発現解析、RT-PCR法による発現解析、モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的解析にかかる費用がかからなかった。そのため2020年度においてはより多数の症例を集め、解析を進めることにしたい、 新しい技術によるデジタルPCR法については想定よりも費用が高くなったが、2020年度に ついては予算の多くを間質性肺炎に生じる前がん病変、化生上皮における低頻度のがん遺伝子変異の解析について費やし、予後不良な間質性肺炎合併肺腺がんの発症機序の解明にあたりたい。より多くの物品費が必要になるが、繰り越した研究費をその部分に充てたい。
|