研究実績の概要 |
1. EGFR変異型肺腺癌の進行に関与する分子的な変化を明らかにするため、特徴的な組織像である微小乳頭状亜型成分に起きている遺伝子発現プロファイルの解明を試みた. マイクロアレイを用いた検索では、DYRK2・KIAA1324・COL4A3・ITGBL1の4つの遺伝子の発現量に変化がみられた.4遺伝子についてRT-PCRでの検証を行い, 生物学的機能などを考慮し, 特にDYRK2に着目して解析を進めた.DYRK2の発現を免疫組織化学的に検索したところ, 微小乳頭状亜型成分を含むEGFR変異型肺腺癌において, より強く発現していることが確認された.DYRK2遺伝子を標的としたFISH解析の結果, 微小乳頭状亜型成分を含むEGFR変異型肺腺癌では, 微小乳頭状亜型成分を含まないEGFR変異型肺腺癌に比べて, 遺伝子増幅を示す症例が有意に多かった. 2.特発性間質性肺炎(IIP)合併肺癌群 とIIP非合併肺癌群に分類し、臨床病理学的所見を比較検討した。mucin family proteinの発現を検索し、各種KRAS 遺伝子の低頻度変異をdigital droplet PCRにより解析した。IIP群では年齢が高く、男性の割合が高く 、喫煙者の割合が高く、喫煙指数が高く、PFSは有意に短かった。 細胞亜型についてはIIP群において非TRU型の頻度が高かった。結果は対象を喫煙者、男性に限定した検討でも同様であり、蜂巣肺領域に発生した腺がんではより差が明瞭であった。多変量解析の結果、IIPと関連する他の臨床データとは独立して、IIP関連肺腺がんではMUC1、MUC7、MUC21 は低発現、MUC4、 MUC5Bは高発現という特徴を示した。背景の化生上皮巣、正常上皮においても種々のKRAS遺伝子の変異が低頻度に認められ、IIP患者における高頻度の肺腺癌発生との関連が示唆された。
|