研究実績の概要 |
本課題(胆道癌の統合分子サブタイピングの確立)の最初の検討として、受容体型チロシンキナーゼの一種で、正常組織では細胞の増殖、分化、遊走、胎生期の発達に関連しているplatelet-derived growth factor-D (PDGF-D)を候補分子の一つとして解析した。胆管癌では、豊富な癌間質を伴うが、その主たる構成要素である癌関連線維芽細胞を誘導する因子の一つとしてもPDGF-Dが報告されている。また、PDGF-Dがリガンドとして作用するためにはmatriptaseなどのプロテアーゼが必要であり,これらも同時に検討した。その結果,肝外胆管癌においては、多くの腫瘍細胞がPDGF-Dおよびmatriptaseを発現していることがわかった。一方、癌間質では発現が高度な腫瘍と乏しい腫瘍が存在することを明らかにした。そして,癌間質でmatriptaseが高発現している腫瘍は無再発生存期間(RFS),全生存期間(OS)ともに不良で、多変量解析でも独立した予後規定因子となることを明らかにした。以上の結果は,Pathology International誌に投稿し受諾された。本件に関して,現在は,PDGF―D,matriptaseの発現とCAFとの関連などを培養細胞において検証中である。 また,すでに構築した組織マイクロアレイにおいて,S100P, IMP3, Maspin, MUC17, GLUT1, S100A4, CD10 などについて免疫組織化学染色で胆道癌サブタイピング法の候補になりうる分子をスクリーニング中である。
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