研究実績の概要 |
肝外胆道癌の適切な治療戦略や今後の胆道癌研究の基盤となる様な統合分子サブタイピング法の開発を目指して研究を進めている。1年目には、受容体型チロシンキナーゼの一種であるplatelet-derived growth factor-D (PDGF-D)とその作用に必要なmatriptaseについて検討した。その結果,多くの肝外胆管癌細胞および間質でPDGF-Dおよびmatriptaseを発現していた。また、癌間質でmatriptaseが高発現している腫瘍は無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)ともに不良で、多変量解析でも独立した予後規定因子となることを明らかにした。これらの結果から、2年目には、胆管癌細胞株(TFK-1・KKU-100)と肝星細胞株(TWNT-1)を用いて、共培養下における癌細胞の遊走アッセイとフローサイトメトリー(FCM)を用いたMatriptase発現の解析を行った。胆管癌細胞株を用いた遊走アッセイでは、単培養下と比較して共培養下で癌細胞の遊走能亢進がみられた。また、FCMを用いたMatriptase発現の解析では、単培養下と比較して共培養下において癌細胞での発現亢進が確認された。これらの研究と並行して、組織マイクロアレイ(肝外胆管癌257例)において,S100P, IMP3, Maspin, MUC17, GLUT1, S100A4, CD10 などについて免疫組織化学染色を行ったところ、感度,正診率では,S100P(各88.3%, 88.4%),IMP3(同79.8%, 77.6%)と比較的良好な成績を示したが,特異度はS100Pで90%,IMP3は50%であった。一方,p53, S100A4, Maspinは,感度は50%未満と低かったが,特異度は100%であり,症例によっては診断に有用と考えられた。
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