研究課題/領域番号 |
18K07024
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
福嶋 敬宜 自治医科大学, 医学部, 教授 (40384937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝外胆管癌 / matriptase / 腫瘍分化度 / 癌間質 |
研究実績の概要 |
肝外胆管癌について、その発生部位に関連しない評価項目である分化度と、肝外胆管癌の特徴の一つである豊富な癌間質に着目して研究を進めた。分化度に関しては、腫瘍の不均一性を考慮したスコアリングシステムを考案し、その有用性を検証した。 1995年から2015年の21年間に本学附属病院で切除された肝外胆管癌257症例。既存の分類である肝門部胆管癌と遠位胆管癌に加え、分類が困難な3管合流部に発生する癌などを分類不能癌と分類しその頻度を調べた。分化度については、前立腺癌で用いられるGleason分類を参考に、腫瘍の主たる2成分をスコアリングし、その和を最終的な評価(histological glandular differentiation score: HGDスコア)とし、予後との関連を解析した。 その結果、HGDスコアはその点数が高くなるにつれて予後不良となる傾向があり、多変量解析にてすべての独立した予後関連因子だった。さらに、リンパ節転移の有無を組み合わせることで、全肝外胆管癌症例の予後を有効に層別化することができた。 また、前年度までに検討してきたPDGF-DとMatriptaseは免疫組織化学的に癌間質においてはその発現の程度は様々で腫瘍の差別化が可能だった。Matriptaseが癌間質で高発現している症例では、発現の程度が乏しい症例と比較して有意に予後が不良であり、多変量解析においても独立した予後因子だった。さらに、HGDスコア高得点と癌間質のMatriptase高発現に相関を認めた。 肝外胆管癌患者の予後層別化に有用な指標となるHGDスコアを考案し、提唱することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が考案したHGDスコアは肝外胆管癌患者の予後層別化に有用な指標であり、さらに、免疫組織化学的に肝外胆管癌間質でMatriptase発現が高度である所見も、独立した予後因子であることを明らかにした。培養細胞株を用いた実験では、胆管癌細胞株と肝星細胞株の共培養で癌細胞のMatriptase発現が単培養下と比較し亢進していた。免疫組織化学的な所見は、癌細胞から産生されたMatriptaseが間質に蓄積したものを検出している可能性があることが分かった。本研究の結果からは、癌間質におけるMatriptase発現の生物学的意義解明には至らなかったものの、臨床上有用と思われる予後因子を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
肝外胆管癌におけるHGDスコアが、患者の予後層別化に有用な指標であるかをより多くの患者で検討する必要がある。また、TMAの検討で胆管癌において有用な免疫染色と考えられたS100P、IMP3などについては、細胞診検体への応用を進める。あわせて、免疫組織化学的に間質におけるMatriptase発現の生物学的意義の解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延による研究活動制限のため。 さらにバイオマーカー候補の探索のための、主に免疫組織化学染色用試薬に当てる計画である。
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