Olfactomedin4(OLFM4)が炎症性腸疾患の炎症活動性に相関するバイオマーカーであるが、潰瘍性大腸炎(UC)ではNF-kB/p65依存性、クローン病(CD)ではAP-1(Jun/Fos)依存性の異なる発現機序を示す。OLFM4はfrizzled7と結合してWNT/β-cateninを抑制する可能性が示唆された。OLFM4は炎症性腸疾患(IBD)関連腫瘍では炎症巣に比して発現低下する。OLFM4は細胞外分泌されてfrizzled7と結合するが、その分泌機構は明らかではない。 我々はexosome型の分泌機構の可能性を培養細胞を用いたexosome内のOLFM4を同定することで示すことができた。また、UC関連癌細胞株から回収したexosomeによって活性化型β-cateninの発現低下、上皮間葉連関(EMT)マーカーの発現低下をきたすことも確認された。 免疫組織化学的解析によって、孤発性大腸癌(sCRC)におけるOLFM4発現とβ-catenin核内移行は逆相関することが示され、UC関連腫瘍では炎症巣におけるOLFM4発現が腫瘍化に従って低下しており、UC関連腫瘍の悪性度との因果関係が示唆された。UC関連腫瘍先進部ではOLMF4発現低下とβ-catenin核内移行・E-cadherin発現低下が相関し、腫瘍先進部簇出とEMTマーカーの正相関、OLFM4発現との逆相関が認められた。炎症巣での評価では、OLFM4発現は古典的なMattsスコアと相関するが、Geboesスコアでは低スコア領域と特に相関することが明らかとなった。 以上から、exosomeを介したOLMF4がWNTを介したEMTを抑制していることが考えられ、UC関連腫瘍の悪性度特性に関与する可能性があると共に、UCの異形成を含む早期病変の評価に寄与する可能性があることが示された。
|