研究課題/領域番号 |
18K07027
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10504615)
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研究分担者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80251304)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 / 人工知能 / 術前化学療法効果 |
研究実績の概要 |
乳癌治療は原則手術と化学療法の組み合わせにおいてなされている。近年術前に必要な化学療法を実施することで、手術範囲を極力小さくした温存手術を実施できること、最終的には手術において化学療法の有効性の情報が得られることから術前化学療法の施行が多くなってきている。 しかし一方で、効果がない症例では副作用 あるいは手術の遅れなどから、事前に術前化学療法の効果を予測することは治療を考える上で重要である。 術前化学療法前の針生検の病理標本をデジタル画像化し、2種類の人工知能 SVMとDeep Learningで解析して術前化学療法の効果予測モデルを構築することを目的としている。 現在点までに東京医科大 山口大学 Cornell大学から症例とその病理標本を入出し 細胞核を中心とした特徴量を計測する準備作業を中心に実施してきた。パイロットスタディとして症例の部分的解析を実施していく中で、病理医による化学療法の効果判定の他に元の癌の縮小率などの定量的な効果判定基準などを利用可能である。 このため国際的なUICCの基準 米国を中心に使用されているRCB(Residula Cancer Borden)の判定基準 および癌縮小率などの判定基準を使用して解析を実施していく。 化学用法の場合、浸潤している癌には効果があるが、多くの症例でDCIS(DUctal Carcinoma in situ)の状態の癌は残ることが多い。しかし米国ではこれらの状態は癌に進展するリスクは高いもののそれ自体を癌とは定義しておらず、米国と日本での判断基準に差がでることが考えられる。解析には初診での針生検組織の画像を対象として解析を行うが、化学療法後に実施する手術組織での効果鑑定が必要となるので、手術組織の画像もすべてデジタル化して評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術前化学療法を受けた症例で、東京医科大学102症例 山口大学 26症例 Cornell大学 152症例 計280症例の術前針生検組織スライドをすべてデジタル画像化を行った。また化学療法効果を判断するための手術標本も同様にデジタル画像化を終了した。術前・化学療法前の 針生検画像より, 解析対象となるROI(Region of Interst) を3384画像抽出を行い、含まれる乳癌細胞核を 2,299,663個画像処理にて抽出を行った。これらのすべての細胞核に対し、細胞核の特徴量(サイズ、円形度 周囲長、長軸と短軸の長さ 細胞核内のクロマチンのムラを示す特徴量など)90個を計測終了した。 これらの細胞核からROIの画像としての特徴量963個の計測を終了した。 各症例において術前化学療法の薬剤において差があり、これらの症例の化学療法剤とその投与期間などを含め、確認作業を終了した。 最終的な化学療法の効果の判定についてはUICCでの判定基準と米国を中心にした評価法であるRCBについて、病理医に再度判定を依頼中である。
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今後の研究の推進方策 |
病理標本の計測作業はすべて終了している。最終的な化学療法の効果判定を終了させ、解析作業を本年度実施する。 またこれらの結果を論文化する。 効果判定などは 電子カルテなどの情報から実施することになり、それぞれの症例の大学に依頼してるが、特に米国のCornell大学で、新型コロナの影響で、1カ月程度の遅延が生じているが、解析の準備作業はほぼ整っているので概ね順調な推移であると現時点では考える。Deep Learningにより解析を実施して最終的には化学療法の効果鑑定システムを構築するが、AIシステムの中、如何なる特徴量が重要になっているかなどの点はブラックボックス化される。これらの問題を回避するため全針生検組織から癌部位を取り出しSVMでの解析を並行させて実施していく。これらのデータ十部に関する作業は終了している。 目標としては9月末に解析を終了させ論文作成に移行させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は症例収集に時間がかかり、解析に伴うソフトウェアの購入、および特殊解析に伴うソフトウェア開発を次年度に持ち越した。今年度の使用予定額を次年度に繰り越して実施する予定で、総額に変更はない。
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